眠い、眠い、と首が一定のリズムで動いている。
そのうち近くにある棚に頭をぶつけるんじゃないだろうか。
自分の家では無いにしてもベッドに行けば良いのに。
それか座っているソファに寝転がれば良いのに、と思った時鈍い音がした。
「痛い」
寝惚けた声で呟き、今しがた打った頭を擦る。
その様子がなんだか面白くてつい笑ってしまう。
すると、拗ねた様な目でに軽く睨まれた。
「彼女が痛がってるのに慰めてもくれないの?」
「はいはい、痛い痛い」
「感情が篭ってない!」
ムッ、と唇を尖らせる。
その唇を指先でつつけば顔を背けられてしまった。
「とし意地悪」
小さい声で、けれどすぐ近くの俺にはちゃんと届く。
相変わらず唇は尖っている。アヒル口。
アヒル口に自分のそれを重ねると、離れた時には直っていた。
まだ慣れないのか耳まで赤くなるのが可愛い。
だからついからかってしまいたくなる。
「お前これ位で照れるなよ」
「う、煩いなぁ…恥ずかしいんだもん仕方無いでしょ」
可愛くない台詞も可愛く思えてしまうのは好きだからだろう。
だから今腕の中に名前を閉じ込める事も極めて自然。
ジタバタともがいているけれど、簡単に逃がしはしない。
生憎俺は男で力の差ははっきりとしている。
「と、とし、何」
セーラー服の上を背中に沿って指先でなぞる。
ビクッ、と震え、名前の体が動かなくなった。
ぎゅっと握られたシャツが引っ張られる。
名前の肩に顔を埋めれば、香るのは名前の香水。
目に入った名前の耳を舐めるとまた震える。
「とし」
困った声が聞こえて顔を覗けば顔も困っていた。
そんな顔ももっと見たい、だなんて。
だから、名前の耳元で言葉を紡ぐんだ。
「もっと恥ずかしい事しようぜ」
(20081101)
それは自然現象