コツンと音がして振り返ると伸びをした銀ちゃんの手が窓に当たった音だった。
正確には銀ちゃんの左手薬指に光るシンプルなシルバーリング。


「おはよう銀ちゃん」

「あー…おはよ。次の授業何?」

「化学。もう皆移動しちゃったよ」


適当に返事をした銀ちゃんは大きな欠伸を一つ。
頭を書きながら欠伸のせいで滲んだ涙を指で拭った。
今教室には銀ちゃんと私の二人。


「面倒だなぁ」


そう言いながら銀ちゃんは私の腕を引いてそのままキスをする。
いつも、二人きりの時にされているから抵抗はしない。
銀ちゃんの左手薬指のシルバーリングは気になるけれど。


「俺サボるから適当に言っておいて」


ひらひら、と片手を振りながら教室を出て行く。
気怠そうに歩く後ろ姿を消えるまで見送った。




「銀ちゃんっ!」

「…あれ?授業は?」

「私もサボっちゃった」


あの後鳴り響くチャイムを聞きながら銀ちゃんの後を追った。
予想通り銀ちゃんは屋上で寝転がっていたからその横に座る。
すると寝転がっていた銀ちゃんも起き上がり、座った。


「そんなに銀さんが恋しいですかー?」

「うん、恋しいかも」


軽く冗談で言ったのに赤くなった銀ちゃんに釣られてしまった。


「それ…マジ?」

「…マジ」


更に赤くなってしまった銀ちゃんを見て首を傾げる。
銀ちゃんは彼女が居たと思ったのだけど。
だって指輪もしているしそんな話もしていた様な。


「お前さ、ちょっと手出して」


言われたまま手を出すと目を閉じろとも言われ素直に従った。
左手薬指がひやりとして思わず目を開けると銀ちゃんが慌て出す。


「おま、目開けるなって」

「…銀ちゃん、これ」


左手薬指に光るのは見慣れたシンプルなシルバーリング。
見慣れたのは銀ちゃんの左手薬指での事。
銀ちゃんは目を逸らして真っ赤になりながら頭を掻く。
そしてチラッと目だけでこちらを見てぼそりと呟いた。


「そう言う、事、デス」


真っ赤になった銀ちゃんに抱きつけば指輪が光った。




(080908) For 瞼にキスを、手のひらに愛を 様
好きとキスと嘘の間
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