止まない雨に溜息を吐いて読み終わった本を重ねる。
朝は降っていなかったし天気予報でもそんな事は言っていなかった。
濡れて帰るのも構わないのだけれど、今日は本がある。
本を濡らす訳にはいかず、読書して時間を潰す事にした。
でも一向に止みそうにも無くて二回目の溜息。


結局先生に閉めるよと言われてしまい、昇降口まで来る。
けれど図書室を出た時と雨足は変わらない。
夏休みだから、こっそり携帯を持ってくれば良かった。


「何してるの?」


いきなり後ろから声がして少し驚く。
しかもこの声は学校一恐れられている相手。
けれど昔から良く知る彼をそうは思えない。
確かに人を遠ざける様に振る舞っているけれど。


「きょーちゃん」

「その呼び方辞めてくれる?」


ムスッとした顔で腕を組む。
そんな表情につい笑いが零れてしまう。
昔から彼をからかう時のみの呼び名。


「じゃあ、恭弥」

「僕の質問に答えない気?」

「別にー?」


そう答えればだから苦手なんだと呟く。
それにまた笑えば彼は機嫌を損ねたらしい。
踵を返して歩いていってしまう。
その後を一定の距離を保って着いていく。


「着いてこないで」


いきなり立ち止まったと思えばそんな言葉。
一応幼馴染なのだからもう少し優しくしても良い気がする。
そこまで考えて優しい恭弥は恭弥じゃ無い、と考えを捨てた。


「だって雨降ってるんだもん」


無言のまま応接室に入る恭弥の後を追って入り扉を閉める。
高級な革張りのソファに座れば柔らかく受け止めた。
恭弥はムスッとしたままカップを取り出したから何か飲むのだろう。
一連の動きを眺めていると何とも言えない表情をする。
それに笑顔で応えていると目の前にカップが置かれた。


「有難う、恭弥」

「それ飲んだら帰ってよ」


頷かずにいても恭弥は机へと戻っていく。
いつも夜遅く帰ってくる恭弥を見かける。
風紀の仕事が大変なのだろう。
今も何cmにもなりそうな書類が積まれている。
紅茶を口に運びながら眺めていたら目が合った。


「…仕事終わってからなら送ってあげても良いけど」

「うん、待ってる」


無言で書類に視線を戻す恭弥の後ろで雨はまだ止まない。




(20080723)
雨待ち部屋
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -