エアコンは壊れて使えない。
扇風機もつい最近壊れてしまった。


「マスター、練習しようよー」


どうにか涼しくなる方法は無いだろうか。
悪足掻きで首に巻いた濡れタオルも温くなって気持ち悪い。
しかし、また濡らしに行くのすら億劫だ。
外では蝉が元気よく鳴いている。


「マスター、無視?」


よりによって何で電気屋はお休みなのだろう。
身近に機械に強い人が居れば良いのに。


「名前」

「…呼び捨て?」

「だってマスター返事してくれないんだもん」


ぷくっ、と膨らんだ頬に指を運ぶ。
しかし触れる直前に凹む。
ボーカロイドのくせに可愛いだなんて反則じゃない?


「…ん?ボーカロイド?レン、ボーカロイドだよね?」

「うん」

「エアコン直して!」


そうだ、こんな近くに機械に強そうな人が居るじゃないか。
レンによろしくね、と言って立ち上がる。
心無しか重かった気分が軽くなった様だ。


「マスター無理だよ。僕解んない」


レンの呟きは私の耳には届かなかった。




(20080707)
夏日
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