ザザッ、と目の前が歪む。
「カイトっ!」
嗚呼、泣かないで。俺は貴女の笑顔が好きなんです。
「マ…ター」
「何?カイト」
「わ……て」
上手く、声が届かない事が苦しい。
苦しい感情を教えてくれたのは貴女。
次から次へと溢れる涙を止めたいのに。
「聞こえないよ、カイト」
あぁ、もう少し、まだもう少し。
「マスター」
力を振り絞って出たのはそこまでだった。
もう涙を流す貴女の顔も見えない。
辺りは真っ暗で目の前にあるのは扉。
「マスター、有難う御座いました」
届かない言葉を最後に扉を開いた。
(20080408)
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