「雪が降りそうですね」


穏やかな笑みを浮かべ空を見上げる。
黒のスーツは雪に映えそうだな。
書類を抱える後ろ姿を見てぼんやり思った。
我等がボスの分の書類も入っているのだろう。
何だかんだで彼女は書類を溜め込んでいく。


「骸様、雪は好きですか?」

「様は辞めて下さいと言ったでしょう」

「クロームちゃんは良くて私は駄目なんですか?」


彼女の言葉に肩を竦めて答えると小さく笑った。
僕の補佐をしている彼女はどうも懐かれている。
ボスにもアルコバレーノにもクローム達にも。
少々気に入らない事を伝えたら笑われてしまった。
今一つ、彼女に伝わっていないらしい。


「名前」

「はい?」


書類を捲る手を止め此方を見る。
耳に掛かっていた髪が落ちた。
しかし、落ちた髪は耳よりも後ろへと向かう。


「骸さん?」

「名前、解っていない様なので、解らせてあげます」


恐らく、何をと言おうとした彼女の唇を塞ぐ。
軽く触れて直ぐに離すと驚きの表情が見える。


「骸、さん?」

「名前は、僕の物になるんですよ」


もう一度唇を重ねて、目だけで見た外の世界にはひとひらの白。




(20080219) For Last requiem 様
闇に舞う白、一片
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