「マスター!マスター!」
子犬の様に駆け寄って来た青髪の男を交わす。
ドカン、と何かにぶつかる音がした。
見てみれば壁に正面から衝突した後。
「何やってんのあんた」
「痛く………ないですよ!」
半泣きで言われた所で信憑性は低い。
しかし相手をする気分でもないので無視。
マグカップを満たすべくキッチンへと入る。
「マスター、聞いて下さいマスター!」
「邪魔」
「マスター」
二度目の呼び掛けも無視してマグカップを満たす。
珈琲の良い香りが鼻腔を占拠し出した頃、着ている服が控え目に引かれる感覚に振り向く。
私よりも背が高いくせに見上げられている様な感じがする。
何だか狡いと思うのだ。外見は大人なくせに。
「…何?」
そう言った途端顔が一瞬にして輝く。
この瞬間に胸が騒ぐのは何とかの弱みだろうか。
「あのねマスター、俺上手く歌える様に練習したんです」
「それで?」
「聴いて下さい」
無言のままカイトの横を通り過ぎる。
ソファに座れば後を着いて着た。
一口珈琲を飲みカイトの方を向く。
相変わらずキラキラとした顔で見ている。
「仕方無いから聴いてあげるよ」
「はいっ!」
(20080210)
子犬の様な君が悪い