栗色の髪の毛の少年のある一面知っていました。
彼は照れながら秘密だと言うので嬉しくて頷いて。
それから頭の中は気付けば彼の事ばかり。


あの日居合わせたのは偶然で、普段は遠くから見るばかり。
或いは、気にしていなかったかもしれません。
風紀委員に相応しくない言動がある事は知っていました。
言葉の通り、神楽ちゃんの事が嫌いなんだと、それ位の認識。


けれど、見ているうちに気付いてしまいました。
彼は彼女の事を特別に想っている事に。


「あ、沖田くん」


扉を開けば彼が自分の席に座っていました。
夕陽に照らされた彼の顔は赤く。
いつもの栗色の髪の毛も赤く染まっていました。
振り返った彼が私に気付き、手招きをします。
だから、素直に近寄っていくと勧められる隣の席。


「女は、何をあげたら喜ぶんでさァ」

「え?」


一瞬、瞬いて言葉を失いました。
女、とは誰か理解した頭。熱くなるのは目の奥。
しかし、泣く訳にはいかないので堪えます。


「神楽ちゃんなら、髪飾りはどう?」



私の言葉に彼の瞳は見開かれ、そして俯いて小声で何かを呟きました。
二人きりの教室では聞き取るには充分です。
彼が暫く何も話さないので私も黙ったまま。
それから、彼は思い出した様に呟きました。


「別に、チャイナにあげるわけ…」


最後は口籠ってしまって聞き取れません。
けれど、顔を背けた彼の耳は真っ赤で、それは決して夕陽のせいではないでしょう。
胸の痛みはきっと気のせいです。


「駅前に、雑貨屋がありやしたねィ」

「うん」


そして彼はお礼の言葉を残して教室を出て行きました。
私の気持ちは夕陽と一緒に深く沈んでいきます。


それでもやはり、私は彼の事ばかり。




(20071128) For オスカーが来た! 様
底なしの海に踏み込んだ足は
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