※グロ、死表現あり

 遊馬くんの為にと思ってすることは、大体空回りしてしまう。それでも、遊馬くんは僕を拒んだりしない。本当に遊馬くんはいい人だ。いつか、僕の気持ちに気づいてくれないだろうか。僕が単純な好きというベクトルを向けていないと言うことに。
でも、遊馬くんは恋愛には鈍感だからきっと気づかない。気づいてほしいけれど、気づかせてあげようとするのもきっと楽しいはずだ。

「でも、さすがに障害物があっては遊馬くんに近づけませんもんね!」
「障害…って……!」

 本当の遊馬くん自身に近づくには、遊馬くんが僕だけを見る必要があった。流石は遊馬くん。その持ち前の明るさに惹かれる輩は沢山いた。だからかなり苦労した。

「この人なんか、ずっと遊馬くんのこと呼んでたんですよ。あまりにも五月蝿かったんで首跳ねちゃいました」

 障害物だった山から、一つ頭を引き抜いた。後ろ髪を持ってしまったため、顔が床を向いてしまった。これでは誰か分からないではないか。でも、顔を見なくても遊馬くんはこの首が誰のか分かったらしい。

「あ……ああ…しゃ、…シャーク…?」

 遊馬くんが分かってくれたならもうこれに用はない。思いきり投げると、それは壁を赤く汚して床に転がった。遊馬くんは胸の鍵を握りしめて震えだした。ああ、そう言えば忘れていた。

「『アストラル』……?」
「っ!な…んで……!」
「遊馬くんのことをずっと見ていたからですよ!だから分かるんです!」

 とうとう言ってしまった。遊馬くんのことを毎日毎日ずっとずっと見ていたことを。そして知った『アストラル』の存在。姿も見えないし、声も聞こえないが、遊馬くんに一番近い障害であることは分かる。
 遊馬くんに近づいて、遊馬くんを鍵から解放してあげた。すると、僕の手にある鍵に手を伸ばしてきた。可哀想に、こんなにこの鍵に執着するように操られていたんだね遊馬くんは。

「もう大丈夫ですよ。安心してください。これで遊馬くんは自由です!」

 手の中のものを粉々に砕いた。これでもう遊馬くんを縛るものは何一つなくなった。僕だけだ。遊馬くんと親しい人物は僕だけで、僕だけが遊馬くんに近づける。

「遊馬くん、僕は遊馬くんが大好きです!」

 やっと言えた愛の言葉に、遊馬くんは目を大きく開いた。丸くて可愛らしい目がより可愛くなり、こんな可愛い遊馬くんを独り占めできる幸せに心が満ちていった。



12/11/15
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