私が今日遊馬を呼んだのはこれだけではない。もうひとつ伝えなければならないことがある。

「遊馬。最後の私のお節介を聞いてほしい」

 立ちあがってそう言うと、遊馬は私の顔を見た。伝えなければならないことがひとつ減ったことで心が少し軽くなったのか、次に出した声は少し大きかった。

「私は遊馬とシャークの恋を応援したい。今のままの二人でいてほしくない。だから……遊馬はシャークに会って、遊馬の気持ちを伝えてきてほしい」
「花子……」
「絶対大丈夫。かっとビングで乗り越えられるし、シャークも遊馬の言うことなら分かってくれる」

 そう。第三者が周りで騒いだところで意味なんてないんだ。これは遊馬とシャークの二人だけの問題なんだから。
 鞄からDゲイザーを取り出して、アドレス帳から一つ探して遊馬に見せた。

「……?俺のアドレスがどうかしたのか?」
「遊馬、私はもうこれ以上遊馬とシャークに関わらない」
「はっ!?」
「シャークに言われたんだ。二人のことに首突っ込んでるのは私の好奇心なのかって。最低だけど、本当にそうだと思うんだ…。私が二人の邪魔をしちゃったから、今遊馬とシャークが苦しんでる。これくらいしないと……」
「花子の馬鹿!」

 遊馬は立ちあがって私の額をぱちんと指ではじいた。痛みに悶絶していると、遊馬はまた馬鹿と言ってきた。額を両手で押さえながら前を向くと、遊馬はとても怒っていた。

「なんでそんなことする必要があるんだよ!仲間ってそんなもんで離れるもんじゃねぇだろ!」
「仲間…?」
「おう!デュエルをした奴はみんな仲間だ。花子も、シャークだってそうだ!」
「でも……私の好奇心のせいで…」
「そんなの昔の話だろ?それに、花子言ったじゃねーか。俺とシャークを応援してくれるって。俺は花子がそう言ってくれてめちゃくちゃ嬉しいぜ!」

 遊馬は笑顔でそう言ってくれた。これはシャークが惚れてしまうのも分かるなぁ。そんなことを思いながら、遊馬につられて笑ってしまった。
 危うく踏み外してしまいそうだったところを遊馬が手を引いてくれた。遊馬が戻してくれなければ、私は大事な友達を自分から失くしてしまうところであった。でもだからと言って私は二人の間に入ってはいけない。これは遊馬とシャークの問題なのだから。
 これからシャークのところへ行く遊馬の背中をばしんと叩くと痛いと悲鳴が上がった。やりすぎてしまったようだけれども問題ないでしょ。私が出来るのはこれくらいなんだから。


13/02/23
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