帰ってからも気分が晴れる事はなかった。シャークと遊馬に対して申し訳ない気持ちでいっぱいで、今日食べた夕飯なんて覚えてない。
 遊馬が泣いていたのはシャークのせい。シャークが悲しそうな顔をしたのは、私と遊馬が付き合っているというデマのせい。そのデマは私が遊馬と一緒にいすぎたせいで生まれたもの。きっとシャークはこのデマを信じてしまったのだろう。
 つまり元を辿れば私のせいなのだ。私がシャークと遊馬の恋愛が成功すればいいなと思ってした行動が悪かったんだ。
 シャークと遊馬の為だとか言って、本当は何処かで自己満足したがっていたのかもしれない。

「花子!話聞いてるの!?」
「えっ!?ああ、ごめん。なんだっけ…」

 気を紛らわそうと思って友達に電話をかけていたのに、考え込んでしまっていたようだ。Dゲイザーに映る友達の顔は不機嫌である。
 もうシャーク達に関わってはいけないと思ったのに、これではまたあの二人の間を裂いてしまう事になる。
 無理に笑って、寝ぼけてたとおどけてみせた。でも、Dゲイザーに映る友達の顔は更に険しくなった。

「……花子さ、何がしたいの?」
「何が?」
「薄々分かってたけどさ、シャークと九十九遊馬くんの事、なんか知ってるんじゃないの?」
「……まぁ…」
「それ、花子が間に入ってもいいことなの?」

 的をつくような指摘に、きゅっと首がしまった。それは今考えていたことで、その言葉によって余計に自分のしてきた事に罪悪感を感じた。

「……分かってる。というか、今日やっと分かった…」
「……はぁ。詳しく知らない私に言われるのも癇に障るかもしれないけど、それならちゃんとケリつけなよ?」

 言い逃げるかのようにおやすみと続け、電話は切られた。

「ケリをつける……か」

 そして浮かんだ一つの方法。もしまた二人が擦れ違ってしまったら。そう思うと体が震えた。

「最後のお節介、聞いてくれるかな」

 アドレス帳のどのグループにも属していない「九十九遊馬」のアドレス。明日には消えてしまうであろう名前を前に覚悟を決めた。


13/01/15
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