遊星は嫉妬深く、愛が重い。その事に十代が気づいたのは、遊星が恋人になる前である。だが、十代はその事を嫌だとも怖いとも思わなかった。むしろ、遊星が自分に対して独占欲を剥きだしにしていることが嬉しいのだ。
 遊星は十代が自分以外のものに好きだと言うことを嫌う。たとえそれが憧れという気持ちであっても。そして十代はその事を知った上でわざと遊星が嫌いな行動を取る。

「遊戯さんの手って綺麗だよな」

 自分のデッキの一番上のカードをドローし、その手を眺めながら十代はそう言った。自分の手を通して、遊戯の手を思い出す。自分自身の手では似ても似つかないのか、十代は不満そうに唇を尖らせて遊戯に会いたいと溢した。
 そんな十代を見て、遊星は眉間に皺を寄せる。だがこれくらいの発言では動かないのか、小さくそうですねと呟くと機械の相手へと戻ってしまった。

「遊戯さんのデュエルって熱くなるよな!俺は遊戯さんのデュエル好きだぜ!」

 その言葉は遊星を動かした。手に持った工具をそのままに、遊星は十代に近づく。自分の手を見つめていた十代はそれに気づき、カードをデッキに戻して座ったまま遊星を下から見つめた。

「俺より好きなんですか」

 十代を見下げる遊星から伝わってくるひやりとした圧力。そして短い言葉の中に含まれている絶対的な独占欲。遊星自身も気づいていないであろうその狂気を感じて、十代は不覚にも口角を上げてしまう。

「俺は遊星が一番だぜ?」
「……じゃあ、俺以外必要ないですよね」

 十代の顔を両手で掴んで無理やり立ち上がらせ、遊星は自分の顔を近づけてそう言った。手の中の工具を十代の頬に押し当てている事に気づいていないのか、十代を逃がさないように手に力を込める。
 お互いの顔は焦点が合わないほど近づいており、十代は遊星しか見えておらず、遊星もまた十代しか見えていない。その視界は、自分以外に必要を求めないようにという遊星の独占欲そのものであった。

「うん。遊星が俺だけを愛してくれるなら他に何にもいらない」

 異常な遊星の愛を、十代は異常にも楽しんでいた。十代は遊星の体に腕を回し、遊星だけを見つめながら強く強く抱き締めた。それもまた十代の独占欲そのものなのである。


13/03/04
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