「なんで遊星ってそんなカッコいいの?」
「……はぁ」

 クールだし、無口だし、でも仲間に対して人一倍熱い。格好をつけることをしない。デュエルもリアルファイトも強い。目もキリッと締まっていて格好いい。
 遊星の良いところを声に出し、指折り数えながら十代は言う。他にも機械に強いだとか、どんな壁が立ちはだかろうと決して諦めない心を持っていることなど、十代の口からマシンガンのように言葉が飛び出す。
 それを遊星は他人事のように聞いていた。十代にそう思ってもらえて嬉しいと思うことも照れ臭いと思うことも全て頷いて返し、時々入る遊星の欠点に対しては生返事を返した。欠点と言っても平気で徹夜することや食事を抜くことなどだが。

「で、まとめてなんで遊星ってそんなにカッコいいの」
「十代さんのほうが素敵だと俺は思いますが」
「今は遊星の話してるんだけどー……。なんというかさ、遊星のカッコよさは普通と違うんだよなー…何なんだろ?」

 文字通り頭を抱えて考え出した十代を、遊星は面白い発想をする人だなと冷静に見ていた。
十代は時々、突拍子もないことを言い出すことがある。遊星が忙しいため、二人でゆっくり過ごせる時間をなかなか取れないこともあってか、十代は邪魔をしないようにと静かに遊星の背中を眺めていることが多い。その時に十代は頭の中で色々考えているのであろう。

「あ、そっか」

 自己完結出来たのか、十代は椅子から立ち上がると遊星の元へと駆け寄ってきた。一体何をする気なのかと遊星は十代を目で追う。
 危ないから一度作業と止めろと言われたので、遊星は素直に機械から工具を離した。

「そいっ」

 不思議な掛け声とともに、十代は遊星の背中に抱きついた。昔はたったこれだけのことで顔を真っ赤にしていたが、遊星はもう慣れてしまった様子だ。首を回して十代を見ながら、不思議そうに瞬きを繰り返している。
 そんなことなど知らない十代は、口を緩めて幸せそうに遊星に抱きついていた。背中から胸へと回した腕でぎゅうぎゅうと強く遊星を抱きしめる。

「俺、遊星のことが好きだから、誰よりもカッコよく見えると思うんだ」

 背中から伝わってくる早い鼓動が、それを証明しているようだった。それに気づいた途端、十代と密着しているところが熱く感じた。
 幸せであると伝えるような鼓動に、遊星も同じくらい早い鼓動で返した。



12/12/22

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