目の前の男との出会いは最悪だった。
 こいつと出会ってしまったせいで俺はむちゃくちゃになってしまった。
 無償にイライラする日々が続いたのだ。それもなぜか分からない。特に気に病む出来事も、癇に障ることもなかった。
 オービタルに九十九遊馬とデュエルしてから様子がおかしいと言われて初めて気づいた。この居心地の悪さは九十九遊馬のせいであると。
 原因が分かったのなら話は早い。九十九遊馬と会いさえすれば、九十九遊馬の何が気に入らないのか分かるはず。要は会いに行けばいいのだ。
 夜だろうが関係ない。九十九遊馬の自宅を探し出し、ハートランドから飛んで行った。そうして家に侵入し、アホ面で寝ている九十九遊馬を叩き起こした。
 そうしたら奴は、叩き起こした人物が俺であると認識してすぐこう言った。

「お前は鍵に戻ってろ!」

 俺が目の前にいるにも関わらず、そう言ったのだ。奴にだけ見えるアストラルに。
その態度にいらついた。そうして、そのいらつきをまるで子供のように奴にぶつけた。感情に任せて力を込めた手で、奴の喉が締まっているのが分かる。奴の涙が横へ流れ、苦しそうに俺を見つめる目にぞくぞくした。

「がっ……あ…」
「なぜだろうな。貴様を見ていると無償にイライラする」
「はっ…なぁ……」

 息を吸おうと必死なのか、首を絞める俺の腕を掴んできた。その手に全く力は入っておらず、掴むというより触れたと言ったほうが近い。
 こいつは死にかけているのかと思うと、いっそ俺の手で死んでしまわないかと思った。他の奴に殺されるくらいなら、俺だけにお前の死に様を見せてくれないだろうか。

「お前は俺に殺されろ」

 意識を失ってしまった体を抱きしめ、今奴を追いこんでこんな風にしたのは俺なのかと思うと、一瞬だけ奴に俺の印を刻みこめたように思った。



12/11/10

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