※舞台はネオ童美野シティ

「遊星先輩!デュエルしよー!」

 ポッポタイムの扉を激しく音を立てて飛び入ってきたのは遊馬であった。しかし遊馬が呼んだ人物からの返事はなく、キーボードを叩く音くらいしか返って来なかった。

「よう遊馬。遊星ならあの通り」
「今は俺達のDホイールの調整中だ。邪魔するなよ」

 クロウとジャックの言葉に、遊馬はちぇっと不満を漏らした。遊星とデュエルをしに来たのは本当だが、遊馬は意中の遊星と一緒に居たいがために此処に来たのだ。
 終わるまで大人しく待っていようと、椅子を一つ借りた。それに座って、真面目な顔で作業をする遊星の背中を眺めた。
 遊星は口調が男っぽいが、こうしてじっくり見るとやはり女性らしい体をしている。女性だから当たり前なのだが。タンクトップ姿は、女性らしい丸みを帯びた体が見てとれる。

「きゃー遊馬ったら目がやっらしぃー」
「うわぁっ!?アテム先輩!?」
「遊星ちゃんが美人だからついつい見ちゃうのは分かるけど、僕達のことが分からないくらい夢中になるなんて……」
「遊馬、後輩と言えども容赦はしない……」

 アテムに冷やかされ、遊戯に苦笑いされ、オッドアイの十代に死刑宣告をされた遊馬は驚いて椅子から転げ落ちそうになった。いつから居ただとか色々聞きたいことがあったが、まず言いたい事が遊馬にはあった。

「もしかして……先輩全員、遊星先輩目当てで…?」
「なんだよ遊馬。お前もかよ…」
「今日の十代先輩何か怖くないですか」
「十代くんは機嫌が悪いんだよ」
「だって!半年ぶりにやっと会える時間が取れたのに!遊星ってば後ろから抱きついても無視なんだぜ!」
「残念だったな十代。俺なんか遊星の寝顔見たことあるんだぜ!」
「ぼ、僕だって遊星ちゃんと一緒に買い物行ったことあるよ!」
「うっ……羨ましいぜ先輩達…」

 遊馬は未だに遊星とは勉強を教えてもらうか、デュエルしかしたことがない。
 四人の間で今にもデュエルが始まりそうな雰囲気が漂った。一人の女性をかけた決闘に年齢も力量も関係ない。それぞれが己のデッキケースに手をかけた。

「……俺抜きでデュエルされるんですか…?」

 外野からの声により、殺気立った空気は氷点下へと急降下した。ばっと声がしたほうへ顔を向けると、作業の途中であろう、工具を持ったまま立っている遊星がいた。
 普段は無表情で感情が読めない彼女だが、今の彼女は明らかにしょぼくれていた。髪が少し垂れているように見える。
 なかなか見せない遊星の表情に、四人は可愛いと思わずにはいられなかったが、そう思う以前に言わなければいけないことに気づいた。

「すまない遊星!遊星の事を忘れていたわけではないんだ!」
「いえ、いいんです…。俺がアテムさん達より機械を優先していたから…。でも、出来ればデュエルは俺が作業を終えるまで待っていただけませんか?」

 そう言うと、遊星はキッチンからクッキーを持ってきてテーブルの真ん中に置いた。

「良ければ食べてください」

 それだけ言うと、遊星はまた作業をしにDホイールの元へと戻った。遊星が背を向けた途端、遊馬を除いた三人の顔がひきつった。逆に遊馬は、目をキラキラさせて出されたクッキーを眺めていた。
 空気は、今までで一番重苦しいものに変わった。

「……い…」
「十代先輩…?」
「俺ならいける俺ならいける俺ならいける俺ならいける俺ならいける俺ならいける俺ならいける俺ならいける……」
「怖っ!なんか呪文唱え出した!?」
「遊馬……お前、鉄の胃袋持ってるか…?」
「アテム先輩の顔色がヤバいことになってる!」
「大丈夫。死者蘇生ならあるだけ持ってきてるから…」
「遊戯先輩が決闘脳になるほどの威力なのこのクッキー!?」

 その後、先輩三人の威圧によって先陣を切らされた遊馬は一瞬記憶が飛んだとか。





【オマケ】

「遊星……お前実は策略家だろ」
「ジャック、そんな難しい言葉をどこで覚えてきた」
「遊星!昨日あげたクッキー美味しかったかしら?」
「ああ。もちろんだ」
「遊星みたいに上手くは出来なかったけれど…」
「そんなことはない。十分美味かったさ。何度も練習すれば、もっと上達する」
「遊星……」
「十六夜、アイツは女だぞ?」
「うっさいわね元キンが。じゃあね遊星!今度はもっと美味しいものを焼いてくるわ!」
「ああ、待っている」

「……遊星、いい加減十六夜の殺人クッキーを遊戯達に出すのは止めろ。お前分かってやっているだろ」
「さぁな」





美佳さんから1000リクで「大人遊戯、アテム、十代、遊馬で遊星♀を争奪戦」でした!
こんな感じでしょうか!どの辺が争奪戦とか私にも分からないです!(←
こんなものですいません!1000越えありがとうございます!
12/11/05

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