※璃緒ちゃんの性格は想像です。結構酷い性格してますが、女王様なのでこれくらいかと(


「凌牙、私恋をしてるみたいなの」

 双子の妹の発言に開いた口が塞がらなかった。しばらく反応出来ないでいると、璃緒にアホ面と言われた。年を増すごとに口が悪くなってきている気がする。
 俺がこう言うとシスコンのように思われるかもしれないが、璃緒は男女問わず人気がある。容姿が整っているからなのだろうが、中身が酷い。
 表面上はニコニコしているが、愚痴はとてもじゃないが本人達に聞かせたくないくらいだ。同性への愚痴はほとんど聞かないが、異性への愚痴は酷い。きっと男に対する偏見の表れなのだろう。
 そんな男を毛嫌いしている璃緒が、まさかと思った。こいつを惚れさせた男なんて想像が出来ない。あるとすれば璃緒よりデュエルが強いやつだろうか。

「一体どんなやつなんだ。お前が惚れるやつなんて想像できねぇ」
「聞いたらびっくりすると思うから言わない」

 女って面倒くせぇ。聞いてほしそうな雰囲気を出しながら、思っている事とは真逆のことを口にする必要があるのだろうか。そういう無駄なやり取りなんていらないだろ。
 イラッとして眉間に皺を寄せていると、いつの間にか朝食を終えていた璃緒が食器を洗うからさっさと食えと言ってきた。
 こんな可愛くない妹の恋が上手くいくのだろうか、と思いながら腹にコーヒーを流し込んだ。





 璃緒との登校は正直嫌だ。なんでって、自然と周りの目線を奪うからだ。

「なんで一緒に登校しなきゃいけないんだ」
「もし私が急に倒れたらどうするの。病弱な妹を守れない兄がどこにいる」
「怪力馬鹿のどこが病弱なんだよ」
「ほんっと凌牙って女の子の気持ち分かってないのね」
「残念だったな。男だから女の気持ちなんかわからねぇ」
「屁理屈」

 そう言って璃緒は足の脛を蹴ってきた。本当に可愛くない。
 もう無視を決め込もうとしたとき、急に後ろからタックルを受けて前のめりに倒れそうになった。このパターンには慣れている。ゆっくりふり返ると、やはりあの特徴的な髪形がそこにはあった。

「遊馬……」
「おっはよーシャーク!」
「もー遊馬!急に走りださないでよ!」

 遊馬に引き続き、いつも遊馬の周りにいる一年生がぞろぞろと集まって来た。最近こういうことが多い気がする。なぜだ。遊馬のせいか。
 片想い中の遊馬が毎朝こうやってタックルをかましてくることは嬉しいのだが、いつもギャラリーを引きつけてくる。俺は遊馬と二人っきりがいいのに。しばらくは絶対璃緒が隣にいるから、それは叶いそうにもないが。

「あ、シャークの妹!もう大丈夫なのか?」
「こら!璃緒さんでしょ!」
「いいのよ。遊馬、私のことは璃緒で構わないわ」
「おう!小鳥もそんなに堅くなるなよー」
「駄目よ!だって年上だもん!」
「シャークにはタメのくせに?」
「あ…」
「遊馬、行こうぜ」

 空気の流れはおかしかったが、なんだか居ても立っても居られなかったのだ。強引に遊馬の手を取って先へ進もうとした。

「……何遊馬と手繋いでんだ璃緒」
「凌牙こそ。何勝手に遊馬と登校しようとしてるの?」
「……えっ?ええっ?」

 両手を掴まれ、遊馬は俺と璃緒の間で困惑している。璃緒はこちらをキッと睨んで、今度は見せつけるように遊馬の腕にしがみついた。
 そこで、ふと朝の会話を思い出した。たしか、璃緒は言っていた。自分は恋をしていると。男を毛嫌いしている璃緒がだ。

「ま、まさかお前…」
「……。遊馬、私と行きましょ!」
「え!?いやでもシャークが…」
「凌牙なんて放っておいて。ね?」
「璃緒、抜け駆けするな」
「あら?最初にしようとしたのはそっちじゃなくって?」

 厄介なライバル登場に、今後が思いやられた。



12/11/04
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