※シャークキラーの遊馬視点

 シャークは女の子にモテる。カッコイイし、デュエルも強い。不良であるところが女の子にはキュンと来るのだろうか。でも、シャークの良さはそういう外見だけじゃないことを俺は知っている。
 デュエルで感じたシャークの心の闇。何があったかとかは聞かなきゃ分からなかったけれど、シャークの苦しみは俺も感じた。
 この頃は弱いところも俺に見せてくれる。この間急に抱き締められた時はビックリしたけれど、妹さんのことか?と聞けば、少し間を置いてから頷いたのを首元で感じた。その後背中に手を回してやると、強く抱き締められた。
 でもそれから何の偶然か、シャークとデュエルどころか全然会えない。あれ、なんでこんなにシャークのことばっかり考えてるんだ俺。

「……珍しいな、君が余裕を持って登校とは」
「うるせー…」
「寝言でシャークの名前を呼んでいたことと関係が?」
「ええっ!?」

 そんなになるほどシャークと会っていないだろうか。これはきっとあれだ。シャークとのデュエルに飢えているんだ。あれ?なんでシャーク限定?

「噂をすれば、だな」
「ん?何が……シャーク…」

 もんもん悩んでいると、珍しく登校しているシャークをアストラルが見つけた。シャークを見つけた途端、ちょっと悪戯心が生まれ、後ろからそろそろと近づき、声をかけようとした。

「遊馬…」

 シャークのため息混じりの声に、胸がドキリとなった。なんで、そんな声で呼ぶんだよ…。なんで、呼ばれただけでドキドキしてんだよ。
 …気のせいだ。このドキドキはシャークにバレたと思ったから動悸しているだけだ。シャークは俺に気づいていないのか、ぼんやりしている。ただ、ビックリしただけだ。

「おはよーシャーク!」
「うぉっ!?」
「なんだよ変な声出して」

 後ろからシャークに抱きつくと、シャークは思った以上に驚いてくれた。なんだ、やっぱりいつも通りじゃんか。

「遊馬、重い」
「堅いこと言うなよ」
「動けないだろ」
「俺シャークと一緒に居たい。最近一緒にデュエルしてないし…」

 ……ん?あれ?なんだって?俺、今なんか変なこと言った気がする。一緒に居たいって言った?確かにシャークといると楽しい。でも、俺が言った一緒に居たいはもっと重いもののように思えた。

「いいぜ。放課後ショップにでも行こうぜ」
「ホントに!?」

 断られると思っていたから声が上がった。でもそんなことなんか気にしないくらい嬉しくって、思わずガッツポーズをしてしまった。

「放課後のデート、楽しみにしてるぜ!」
「……ふっ、また放課後な遊馬」

 微笑みながらそう言ったシャークに、また胸が高鳴った。またからかうつもりでデートだなんて言葉を使ったのに、シャークは怒るどころか微笑みながら頭を撫でたのだ。
 なんだか急に恥ずかしくなって、その場から逃げ出してしまった。どうしたんだよ、俺。なんでこんなに苦しいんだよ。

「遊馬、今の君はこの間のドラマのヒロインのようだな」
「はぁ…?」
「顔が赤い。それに、鍵を通して早い鼓動が伝わってくる」

 シャークの見せた綺麗な微笑みが頭をよぎる度、胸が締め付けられて、全身がむず痒くなる。
 こんなめちゃくちゃな感情、知らない。



12/11/02

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