―シャーク様ってレベル高いよね。
 ―こうやって遠くから見てるだけで精一杯だわ。
 ―あんな人を落とせる人なんていないんじゃないかしら。

 全部聞こえてるんだよアホ面どもが。
 人のこと勝手に分析して分かったような口聞きやがって。外面しか見てないお前らに一体何が分かるっていうんだ。
 遊馬とのデュエルを通して、昔よりすっかり毒が抜けた気がする。
 昔はムカついたさ。デュエルチャンピオン目指すとか言い出したり、あの折れない決意を持った目が嫌いだった。でもいつの間にか、アイツを好きになっていたんだ。

「遊馬…」

 思わずため息が出た。俺は俺なりに遊馬にアプローチしているつもりなのだが、やっぱりアイツは分かっていない。初恋故に、俺もどうすればいいか分かっていないところがある。

「おはよーシャーク!」
「うおっ!?」
「なんだよ変な声出して」

 びっくりした。びっくりした。遊馬のことを考えるだけで胸が苦しくなるなんて病気だな、と思っていた矢先に本人が後ろから抱きついてきたんだ。朝から会えるなんて、顔には出さないが実は嬉しい。

「遊馬、重い」
「堅いこと言うなよ」
「動けないだろ」
「俺シャークと一緒に居たい。最近一緒にデュエルしてないし…」

 ふてくされたような声に、ため息をついた。これは呆れたという意味ではない。遊馬が可愛すぎるという意味だ。

「いいぜ。放課後ショップにでも行こうぜ」
「ホントに!?」

 遊馬は目で分かるくらいにはしゃぎ、思わず期待してしまった。遊馬も俺のことを好きなのではと。でも、期待なんかしても無駄なんだ。所詮は男同士。遊馬はそういう恋愛があることすら知らないだろう。

「放課後のデート、楽しみにしてるぜ!」
「……ふっ、また放課後な遊馬」

 デートと言われ、一瞬きゅんっと胸が締め付けられた。高鳴る胸を抑えてなんとかいつも通りに返したが、遊馬は慌てて走って行ってしまった。どうしたっていうんだ。何かおかしいところがあっただろうか。
 未だ高鳴る胸は、きっと放課後まで治まらないだろう。



12/11/01

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