「どうするよこれ」
「止むまで待つしかないだろ」

 今月に入ってから、雨が降ることが多くなった。
 その為、折り畳み傘を持ってくる生徒が多かったが、今日遊馬と凌牙は傘を忘れてしまった。
 放課後にデートをするつもりだったが、この雨で身動き出来ず、大人しく教室で雨が止むのを待つしかない。

「シャークはしっかりしてるから、傘持ってきてると思ってたんだけど」

 遊馬がつまらなさそうに窓の外を見ながら呟いた。それを聞いた凌牙は眉間の皺を増やしただけで、黙ってDゲイザーを操作し続けた。

「……なぁシャーク、暇」
「今日出された課題があるだろ」
「だって分かんないんだもん……」
「どうせいつも居眠りしてるんだろ。そんなだから傘忘れるんだよ」

 机に突っ伏していた遊馬は、それを聞いて頭にきてしまった。
 凌牙こそ傘を忘れて学校で立ち往生しているというのに、自分のことは棚に上げて、関係のないことと結びつけて馬鹿にされたのだ。
 ただでさえ気分が悪いのに、こんなことを言われては黙っていられない。一言文句を言ってやろうと遊馬は立ち上がった。

「あっ……」

 その時、遊馬はある一つの傘に目がいった。それは窓の外、一つの傘に寄り添って歩く男女のカップルであった。

「……相合い傘」
「どうした?」

 さっきまでの熱が急に治まり、遊馬はストンと椅子に座り直して凌牙に向き合った。

「俺さ、今日……ワザと傘忘れたんだよな」
「はぁ?なんで」
「だって、傘を忘れたらシャークと相合い傘出来ると思ったから…」

 遊馬はそう言うと、また窓へと顔を向けた。どうせ女々しいと思われるんだろうなと、遊馬はため息を吐いた。

「遊馬…」
「……なんだよ」
「そんなに不機嫌になるなって」
「どうせ女々しいとか思ってんだろぉ!」
「いや、馬鹿だと思っている」

 その言葉に、遊馬は思わず何だと!と声をあげて、振り向いた。

「だって俺もお前と相合い傘したくて傘忘れたんだぜ?」

 な、馬鹿だろ俺達。と微笑みながら言う凌牙を見て、遊馬は怒りが治まっていく反面、幸せで頬が緩んだ。




12/10/23

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