最近遊星は徹夜続きであった。大会出場の資金を集めるための修理屋とDホイールのエンジン開発は、遊星の体に悲鳴を上げさせている。
 ブルーノがいてくれる分かなり楽にはなったが、昔からの癖が抜けないのだろうか。眠れなくなってしまっていたのだ。
 ブルーノには先に休むと言ってベッドに横になるが、眠気が全く来ない。不眠症というやつなのだろうかと、遊星は冴え続ける頭で考えた。

「遊星」

 扉の向こうでジャックが遊星を呼んだ。遊星が起き上がると、ジャックはすでに部屋へと入っていた。

「なんだジャック」
「どうせまた眠れていないのだろう?」

 ぎしりと、男二人分の重みを受けたベッドが鳴った。それを合図かのように、遊星は狭いベッドの中で壁の方へ寄り、開けたスペースをぽんぽんと叩いた。
 遊星が開けたスペースへ、ジャックが潜り込んだ。やはりシングルベッドに男二人は厳しすぎる。

「まったく。可愛げのないやつだな」
「そんな俺が好きなんだろう?」
「この口が言うか」

 ジャックは遊星を自分の胸に抱き寄せると、その口にキスをした。遊星もそれに答えるかのように目を閉じ、ジャックの首に腕を回した。
 じっくりお互いの唇を味わうと、最後にバードキスをして見つめ合う。

「お前はいつまで経っても無表情なんだな」
「これでもちゃんと嬉しいんだぞ」
「それをもっと顔に出さんか」
「……ジャック」

 今度は遊星からキスを仕掛けた。浅いものから深いものへ。だが、舌の動きがだんだん遅くなり、バードキスを最後に止まってしまった。

「……すー…」
「やれやれ」

 安心して眠った遊星を抱きしめ、ジャックも目を閉じた。




12/10/20
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