私の左手をどうか
ゴツゴツしたおっきな手。
紫原君のその手に包まれるのが私は大好きで。
理由はないけど左手を包まれるのが特に好きだ。
「なまえちん、帰ろー?」
夕方、私の教室にヒョコリと顔を覗かせる紫原君の元へ顔を綻ばせながら向かう。
「ん」
いつものように私の大好きな手を差し出す紫原君。
その手を左手で握れば握り返してくれる。
ああ、暖かい。
「紫原君の手、やっぱいいよね。安定感があるっていうかさ、うーん、なんかいいよね」
「なんかいいってわかんねえし」
「だよね。でも安心するよ、大好きだな」
言えば、紫原君はあっそと素っ気なく、少し頬を紅色に染めながら呟いた。
「まあ、なまえちんがそんなに好きなら別に構わないけどさ」
「うん」
窓から零れんばかりの橙色を2人で浴びながらのんびり歩き、私はまた心の中で願うのだ。
私の左手をどうか
これからも包んでくれないだろうか。
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