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元々人間、今は喋る猫。
過程はこの際どうでもよくて。

私が猫になってから結構な時間が流れた。
かなりといっても、うん十年前とかではないが。
帰る家もなく、さ迷っている所を優しそうな老夫婦に拾われた。

木吉夫妻だ。孫と暮らしている。名前は鉄平。
これまた老夫婦のように優しい少年でして。
有り難い事に現在も木吉家にはお世話になっている。
そんな彼は私が元々人間で、喋れるという事は知っている。


「なまえ、昼飯だぞー?」


木吉と朝方ロードワークへ行ったと思ったらもうそんな時間か。
そうそう、私が人間に戻りたいかと言えばそれはない。
猫のままで、気長に気楽にのんびり生きてくさ。


「木吉夫妻はお出掛け?」


「お前が寝てる間にな。帰りはそんなに遅くならないそうだ」


「そうか」


彼はお皿に乗ったご飯を私の目の前に置きながらそう言った。

目の前にはつやつやと輝く白米に綺麗な形をした黄色い厚焼き玉子、色とりどりのサラダにきつね色に揚げられたコロッケ。

実に旨そうなのである。

猫である今の私にはキャットフードが1番なのだろうけどどうしても躊躇ってしまう為、普通に人間だった頃と同じ食生活をしている。


「頂きます」


「頂きます!」


「旨い」


「ああ、旨いな」


さて、今日は何処へ遊びに行こうか。

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