03
それは私が大学から帰宅する前の事。

なんでも青峰君は金曜日の今日、本来なら部活なのだが体育館が使えないとの事で途中から学校をサボり、ストリートコートでバスケをするため最近知った近道になるこの道を通ったらしい。

明日は東京と県外から来る知り合いとストバスをするらしく、そのためにその約束のストリートコートで練習をしておきたかったとの事で。
そして神社の前であるものを拾った直後、急に意識が途絶え目が覚めたらこの部屋に倒れていたという状況だった。


「それで取り敢えず扉から出ようとしたけど鍵が内側から掛かってて開かず、蹴破ろうとしたけどそれでも開かなかったと」


その扉に視線を移す。
確かに鍵穴がある。
つまりこの部屋に鍵がある可能性があるという事だ。


「そうだな。だから一応鍵を探してみたけど一向に見付からねえし疲れたしで休憩してたら床に落ちてるのを見付けた」


「でもなんでそんなもの拾ったの?」


青峰君の持っているそれは美しい装飾が施された手鏡。


「どうみても鏡だよね。もしかして青峰君、実はそういうの集めてるとか」


「んなわけあるか!そんな趣味持ち合わせてねえっつの。道のど真ん中に落ちてて避けながらチラッと一瞥したらよ」


青峰君は続ける。


「見た目はよく分からなかったんだけど女らしき姿が一瞬写ったんだよ……。気のせいだろと思いながら無視しようと思ったんだわ」


「それはそれはホラーな話ですな」


少しだけ青ざめる青峰君。
もしかして彼は幽霊とかそういった心霊系は苦手なのかも。
てことは目が覚めたらこんな明らかに廃屋ですよオーラ漂うとこに1人だったんだし、本当は怖いって思ったりとかしたのかな。


「別に怖いなんて思ってねえから。ビビってなんかねえよ」


「まだ何も言ってないよ。まあ苦手なものなんてあって当然なんだし別にいいんじゃない?ましてや幽霊とかよく分からん類のものじゃあねえ」


「てめっ、違うっつってんだろうが!その証拠に鏡拾っただろ!?」


いやそれビビったとか鏡に女が写ったのが怖くて逃げたとか思われたくなかったから拾ったんじゃない?
口には出さないでおくけどそんな気がする。


「んで、その鏡がなんで私を巻き込んだかもって思ったの?」


「扉を蹴破れなくて仕方なく鍵探してたら床に落ちてるのを見付けたんだよ。で、どうせ気のせいに決まってんだろと思いながら鏡面を見た直後にまた写ったんだよ」


「同じ女の人?」


「やっぱり見た目は忘れたんだけど多分な。でもよ!その女のおっぱい……でかかったんだよ」


「ふ、ふうん」


顔とかは覚えてないのにそういうのは覚えてんのかい!


「もしかしたらこの鏡からいきなり巨乳美人が現れるとか?てかこれそういう人を喚べるようなもんなのかも?なんだそれ最高じゃねえか!って考えた直後、この結果だった」


「巨乳が絡んだ途端それですか、そうですか。てかさ、それはただの偶然かもしれないんだから青峰君は悪くないと思うんだけど」


「偶然にしちゃタイミングよすぎだろ。俺がそう思った直後にあんたがいきなり現れたんだぞ?大体俺が鏡なんぞ拾わなけりゃよかった話なんだしよ」


「いやでも、」


「案外めんどうなやつだな、えっと鈴木だったっけ?いいから俺のせいにしとけよ」


私を半ば睨み付けながらぶっきらぼうに言う。
あのね青峰君、かっこいいんだけど残念そうに私(主に胸)を見ないでくんないかな。
台無しだよ!


「まあ気にすんなよ」


「それ君が言っちゃうの?え、これ私怒ってもいいよね」


「来世は大きく育つといいな」


からかうような口調で青峰君が言った瞬間。
扉の外側、少し離れた先から不気味な声とゆっくりゆっくりじわじわと近付いてくる足音。
そして扉をかなり荒く叩く音の後、扉が開く音が響いた。


「……」


「……」


無言になる青峰君と私。
チラッと彼の顔を見ると、無表情っちゃ無表情なんだけどなんとも言えない顔をしてる。
しかし額に冷や汗が。
私はというと、少し驚いたがすぐに息を潜め、隅っこの壁際に原形を保ったクローゼットを見つめていた。

あれくらいなら私と長身且つ身体のでかい青峰君でも大丈夫なはずだ。
考えている内に一時止んでいた足音が再び聞こえ始め、そして徐々に近付いてくる。
先程の部屋に入ってたった今その部屋から出てきたのかもしれない。


「青峰君」


「!?んだよっ!」


「驚かしてごめん。あそこのクローゼット、多分隠れる事が出来るはず」


「お、おう。……最初に会った時も思ったけどお前って以外と冷静だよな」


「青峰君もね。幽霊以外」


「るっせえな。おら、隠れるんだろ」


クローゼットまで急ぎ足で行き、静かにクローゼットの中に青峰君と隠れる。
埃っぽいが隠れる事が出来てよかった。
壊れたりしたらどうしようかと。
取り敢えず、どうか見付かりませんように。

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2014/0717:修正

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