02
少しの間流れる沈黙。
しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。
今の所、彼がなんらかのアクションをとる気配もないし、お互いの状況を話しても大丈夫だろう。
「取り敢えずお互いの状況とさっきの君の話、詳しく聞きたいんだけど」
「めんどくせえけど仕方ねえな、めんどくせえけど。あー、そういやあんたの名前聞いてなかったな」
背が高く目付きの悪い彼に見下ろされるというのは結構怖い。
なんかカツアゲされてる気分だ。
「人に名前を聞く時は自分から名乗るもんだよ。あとめんどうとか2回も言わなくていいし」
「ああ?」
「鈴木千春」
くっ、迫力のあまり私から名乗ってしまった……!
しかもなんか満足気だし。
「ふうん、鈴木千春ね。青峰大輝」
青峰大輝。
聞いた事あるな、その名前。
なんだっけ。
うーん、思い出せないや。
「青峰君か。じゃあ一応私から状況を説明するね」
「おー、なるべく簡潔にな」
「……大学の帰り道に小さな神社のある道を通って、その神社の前を通り過ぎようとしたらいきなり身体がジョニーと一緒に」
「ちょっといいか」
喋ってすぐ、いきなり話を遮られる。
なんだ一体。
「あんた大学生だったのかよ。つかジョニーって誰」
「そうだよ、華の女子大生。で、ジョニーっていうのはあの子」
私が指差したのは床に倒れている鈍い銀を放つ自転車。
「長年連れ添った相棒。あ、因みに5代目なんだよね」
「いや長年連れ添った相棒なのに5代目ってなんだよ……」
「同じメーカーでね、自転車が」
「それ長年連れ添った相棒になんのか?」
細かい事は気にするもんじゃないよ。
「話を戻すけど身体がジョニーごと神社に引き摺られて周りの景色も急になくなるし。どうする事も出来ないまま、どんどん神社へ今度は吸い込まれてここに落ちたら青峰君が目の前にいた、って感じかな」
一応私なりに簡潔に説明をしたつもりだ。
あとは青峰君の状況を聞くだけだね。
「神社……」
少しだけ険しくなる青峰君の顔。
「神社がどうかした?」
「いや、あんたを巻き込んだ原因の物を拾ったのが神社の前だったから」
「……ねえ青峰君、その神社と周りの景色、特徴って教えてもらっていい?」
気になったので聞けば、彼は教えてくれた。
「ほっそい道で車じゃキツイが自転車なら通れる道だな。周りはこれといった特徴はねえけど小さな川が流れてたな。で、その道にまだ陽が出てんのにやけに暗くて気味悪い神社があってよ。そこであるもんを拾った」
細い道。
小さな川。
そして陽が出ているのに暗くて気味悪い神社。
「あるもんっていうのも気になるけど取り敢えず青峰君、他になかった?特徴。例えばその川の向こう側に寂れた小さな公園があるとか」
「お、そういやあったわ。てことはあんたが通った道って」
「多分、青峰君の考えてる事は正しいよ」
やっぱあの道を通るべきではなかったな。
今更後悔しても遅いんだけどね……。
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