01
鈍い音と痛み、堅い地面に身体と自転車が打ち付けられる。


「いっつ……」


痛みに耐えゆっくりと立ち上がると私の目の前に少年がいた。

黒いジャージを纏うこんがり日焼けした肌。
やけに人相が悪く、精悍な顔付きをした青髪の少年。
いきなり遭遇した彼に驚きと警戒を混ぜつつ一歩、後ろに下がる。
しかし、彼は呆然とした表情で私を凝視している。

と思いきや、その表情は崩れ、何故かがっかりした顔に変わった。


「で」


「で?」


「でっかくねえ!おいふざけんなよ、俺のときめき返せ貧乳!」


「んなっ」


いきなり失礼すぎやしないか!?
なんで初対面の人に貧乳とか言われなきゃなんないのさ。
大体、貧乳って程じゃないんですけど。


「平均的な部類なんですが」


「俺の中ではな、E以下は貧乳なんだよ。これ常識な」


そんな常識聞いた事ねえよ。
いや、こんな事を言っている場合ではない。

改めてよく辺りを見回せば、建物の中らしい。
所々染みの着いた壁。
色褪せたフローリングの床もキシキシと音を立てている。
辺りに充満するカビの匂い。
埃っぽい空気。
私の正面から左側にはこれまた無惨な姿の木製の扉が。
しかしこの部屋、窓がない。
他にも原形を留めてない家具やら本が足元に散乱している。

どこかの一室。
見るからにかなり昔からありそうな廃屋。
部屋もかなり広い。

なんだ、この状況は。
私に一体何が起きている?ここは社の中ではないの?
いきなり社の方へ引き摺られ、吸い込まれたと思ったら訳の分からない廃屋に見知らぬ青年と2人。彼は何故こんな所に1人で?
大体見知らぬ奴が急に現れたら警戒するもんじゃない?


「あー……、まあ取り敢えず謝っとくわ」


バツの悪そうに頭を掻き謝る少年。


「え、なんで?」


「お前がこんなとこに来ちまったのは多分俺のせいだからな」


だから悪い。
呟く言葉に固まる。
つまりどういう事よ。

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