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大学の講義を終え、鬱々としながら自転車のペダルを漕ぐ。
今日からいつも大学に行き来する道が工事で全面通行止めになってしまった。
その為、工事が終わるまである道を通らなければならない。
まあ工事だし仕方がないと済ませたい所だが、その道を私はあまり通りたくないのだ。

小学生の時、通学路がその道だった。通り沿いにそれはぽつんと存在している。

そこは太陽の光が差し込んでいるのに何故かいつも薄暗く、空気が異様に冷たい。
それだけでなく、いつも複数の視線に見られているような気がしてならなかった。
身体に突き刺すような視線。
ホラーゲームは大好きだし、お化け屋敷や肝試しも1人で平気な人間だがここだけはどうしても無理。
嫌な思い出があるからだ。

それがここを通りたくない一番の理由。


「うわあ……着いちゃったよ」


考えている内に例の場所がある道に着いてしまっていた。
仕方がない、全速力だ。
足に力を入れ、道を直進していく。さっさと通ってしまおう。
なるべく無心になって暫く進むと、やがて例の場所が視界に入った。

鬱蒼と生い茂る青々しい木々。
薄暗く、不気味な香り漂わす空気。
聳え立つ赤い鳥居。
その奥、ひっそりと建っている神社。
朝も通り、見たばかりだが相変わらず気味が悪い。
それが徐々に近付きやっと通り過ぎようとした瞬間。

突如、私の身体は倒れ、自転車ごと神社へ引き摺られていった。

もはや悲鳴が出ない。
私の全身を渦巻くのは恐怖と焦り。
身体が完全に鳥居を通り過ぎたその時、視界から先程まで辿っていた道が、周囲の景色が消える。

まさに理解不能。

痛みに構う暇なく、必死に指先を石が敷き詰められた地面に突き立てるがそれも虚しく。
私の身体は相棒の自転車と共に社へ向かっていった。

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