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「あの、」

引きつった笑顔を浮かべる黄瀬君の視線の先には、私が手に持っている木製のお椀。
その中には今日の夕飯であるすき焼きの具材が放り込まれている。
それを紫原君と出雲君以外も何故か凝視していた。
緑間君に至っては眉間の皺が凄い事に。

「どうしたの?」

「かけすぎじゃないっスかね……」

「え、どれ?」

「いやあんたのご飯とお椀の具材に乗っかってるイカの塩辛っスよ!具材もご飯も山になってるイカの塩辛で全く見えてないじゃないっスか!」

「普通の量じゃないかな」

「どこが!?何をどう間違えればその量が普通なんスか!?」

イカの塩辛と肉や白滝をもさもさと口に放り数回咀嚼する。
そういえば出雲君も紫原君も最初は引きつってたなあ。
私にとっては普通の量なんだよね。

「すみません皆さん、気にしないで下さい。この人基本何でもイカの塩辛ぶっかけるんです。イカの塩辛が大量に乗っかってるなんていつもの事なんで」

「はあ……。あの、何でもというのは」

黒子君が呆れたような目で出雲君をみやると彼は溜め息混じりに答える。

「言ったままです。大体何でもイカの塩辛ですから。チョコレートとかケーキとかも例外じゃないですよ」

「あ、甘いもんにイカの塩辛とかあんたどんな味覚してんだよ!」

うえっと青峰君達があからさまに顔を歪め、紫原君がうんうんと頷く。
あ、そういえば何故か紫原君にも銀時君の時みたく怒られたなあ。
「有り得んし、まじ有り得んから」って物凄く睨まれながら。

「すみません、成り行きで晩ご飯まで頂いちゃいましたが良かったんでしょうか?」

私の正面に座っているさつきちゃんが眉をハの字にして申し訳なさそうに私と出雲君にそう言った。
「いいよいいよー」

「そうですよ、気にしないで下さい」

「そうそう、気にするこたあねえよ」

私と出雲君に続いて銀時君が……が?

「ぎ、ぎぎん!?」

私の後ろ、正確には襖から顔を覗かせるのは確かに銀時君だ。
彼の突然の登場に驚いたのは私だけでなくこの場にいる全員も一緒で。

「ぎぎんって何だよ、モンスターがボールに入ってるあれか?新種か?」

「いや効果音の方がしっくりくるって違うよ!銀時君何でここに」

「いや何でってほら、あれだよ、すき焼きのいい匂いに釣られてっていうのは冗談で。ね、海鳴ちゃん止めよ?無言で拳振り上げるの止めよ?さっきまで俺ん家に源外のじいさんが来てたんだよ」
源外さんか。

名前だけは知っている。
……あれ、あの人指名手配されてなかった?

「状況を説明してガキ共が落ちてきた辺りを調べてもらったんだけど結果、お手上げ状態だったんでな。ついでだし海鳴ん家に寄って何か進展したなかあっと銀さんがわざわざ見に来てあげたわけよ」

エスケープしてくれたけどねっ。

「取り敢えず互いの状況は話したけど……」

「あの……」

おずおずとさつきちゃんが言葉を発し、続けた。

「言いそびれちゃったんですけど時間の流れというか経過って異なってますよね」

さつきちゃんの言葉通り、そこが気になっていた。
いや、私もタイミング逃しただけだからね?
いやまじだって!……とにかくだ。

紫原君がこちらに来てしまったのは3日前。
彼らがこちらに来てしまったのは今日。
だというのに黒子君の話では3日も経っていたとは聞いていない。

「紫原君がここへ来て3日経ったけど黒子君達は今日来たんだよね。でも黒子君達の方では3日も経ってないんだよね?」

「はい。僕達が巻き込まれたのも紫原君が屋上に向かって多分数十分経ったかぐらいかと」
「うおお!?ってまたお前かよ!何度俺をビビらせる気だコノヤロー!」

銀時君の近くにいた黒子君の声に彼は驚き、肩をビクッと揺らし叫ぶ。

「すみません坂田さん、驚かせてるつもりはないんですが何せ影が薄いもので。話を戻しますが時間の流れがおかしくなってしまってる、つまりはそういう事なんでしょうか?」

「ううん、多分そうなんだと思うけどおかしくなっているのかもしれないし、元々時間の流れっていうのは異なってるのかも」

「まあ世界観も違うしそれも有り得るよねー」

「確かにそうですね、とにかく今の所僕達の方が時間の流れは遅いという事は分かりましたしその方が僕達的にも都合がいいですし。あ、そういえば成田さん達や緑間君達にまだ伝えてない事があるんです」

緑間君達にも伝えてない事か。何だろう?


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