11
えー、ここで少しお知らせがあります。
銀時君が逃げました。いつの間にか出雲君もいなくなっていました。
何故だ。
「……」
そしてこの無言である。え、どうしよう。
とにかく銀時君と彼らが何故一緒にいるのか、そうなった経緯は知らない訳で。
疑われてるって事はよーく理解できたけど。
私の考えが正しいとしてだ。
だけどそれを私が上手く説明できるだろうか。
逆に紫原君の話をしたら、それすら私達のせいだと疑われかねないような気もする。
紫原君に説得してもらうのもアリだとは思うけど、紫原君と彼らが顔見知りだとして、特に親密な仲だとしたら私と彼ら、どちらを信じるだろうか。
そもそも紫原君は部屋で何をしてるんだろう。
お昼ご飯にめんどいオーラ全開の彼に食器を運んだり、おかずを並べたりするのを手伝ってもらったきりだ。
静かだし、昼寝かな。
「坂田さんには逃げられましたがそろそろ答えて欲しいのだよ。あなた達が俺達をこんな目に合わせたんじゃないんですか?」
探りを入れられているのかな。
てか銀時君は逃げたら余計に疑われるって思わなかったのかね。
いやこれは私に俺の疑いも一緒に晴らしといてって事か。
晴らしてなんかやらないもんね!
「えっと、私達は銀時君と君達がここに来るまでの経緯をよく知らないからなんともいえないかな」
当たり障りなく答える。
そこに今度は「あの」と、私の目の前にいた水色の髪をした少年がしゃべ……えっ。
「うぎゃあ!え、えっ、ごめん君いつからそこに!?」
全く気が付かなかった私は情けない声を出してしまった。
「すみません、驚かすつもりはなかったんです。あと最初からあなたの目の前にいました」
「うっそ。ご、ごめんね」
「いえ、気にしないで下さい。僕は元々影が薄いので気付かれない事も驚かれる事もよくあるから慣れてますので」
ゆっくりしたトーンで話す少年はこの中で一番落ち着いているように見えた。
「ええと、」
「あ、すみません、僕は黒子テツヤと言います」
「いえいえお気になさらず。成田海鳴です」
自己紹介をしながらペコリと頭を下げる黒子君につられて、私も思わず敬語で自己紹介をし頭を下げた。
「坂田さんからお電話はいってたようですが経緯までは把握してないようですね」
「そういうフリをしてるだけかもしれん」
緑髪の少年が眼鏡をクイッと上げながら言えば、黒子君は彼をみやる。
「そうでしょうか?僕はずっと黙って今までこの流れを見てましたが、成田さんは僕達と坂田さんが一緒にいたことについての経緯をしっかりと把握している風には見えませんでしたよ」
「上手い事演技してるだけじゃないっスか?」
「いえ、それもないかと。ただ……」
自分の考えが合っているか分からないのか、少し躊躇いを見せる黒子君。
「ただなんだよ、テツ」
「はい。確信はありませんが、成田さんは経緯を知らなくても僕達がどうしてこのようになったのかという状況をなんとなく知っているのではないでしょうか」
「え、テツ君それってどういう事?」
なん、だと。
ほんと、どういう事なの。
←→
[戻る]