09
受話器を手にし、今度は私から銀時君へ電話をかける。
「あ、もしもし銀時君?私だけど」
『は!?お前まだ家にいんのかよ!』
「あのさ、銀時君の家に行くの営業が終わってからじゃなきゃ駄目?」
『お前自分の店が終んの何時だと思ってんの?8時だよな?そんなに待てねえよ!ほら、いいから来いって』
ううーん、思ったんだけどさ、懇願っていうよりてめえも道連れにしてやるぜグヘへって感じなんだよね、銀時君の声。
もしそうならこれ巻き込まれるパターンか押し付けられるパターンのどっちかだよね。やばい、面倒な未来しか見えない。
『……よし、分かった』
「うん?」
『今からお前んとこ行くわ。俺は今んとこ仕事入ってねえし。よし決まりな!』
「えっ、ちょ、は!?いや来なくていいから、って切れてるし……」
私の耳に届くのは無機質な音。
どんだけ私を巻き込みたいのさ。
なにもしかして私銀時君に恨まれるような事した?
「出雲君。私、銀時君に恨まれるような事したかな。そんな覚えないんだけど」
「2週間前」
「2週間前?」
「2週間前、坂田さんが家に来たじゃないですか。単品で」
言われて思い出す。確かに来た。
銀時君が電話をかけてくるのは珍しいけど家に来るのは別に珍しい事じゃない。
神楽ちゃんと新八君、定春君と一緒に来ることもあれば1人で来る事もあるし、神楽ちゃんが定春君を連れて遊びに来る事だってある。
「あー、来たね。うんうん」
しかし恨まれるような事はしてないよ。
「ケーキ、食べたじゃないですか」
「?食べたね」
「海鳴先生、あなたトッピングとかいって坂田さんのケーキに何を乗せたか分かりますか?」
「うん、イカの塩辛」
即答できるよ!美味しかったなあ。
「……」
無言でこちらを見る出雲君。
心なしか呆れているように見える。
なんでー?
「私変な事言った?」
「自分の胸に手を当ててよく考えて下さい」
えー、分からないよ。
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