08
晴天広がる昼下がりの午後。
朝は大変だったなあと眩しい青空を窓から見上げ、心の中で呟く。

昨日、紫原君とたわいもない話をしている内に寝てしまった私は飛び起きた。
出雲君にお店の開店時間の30分前だと耳元で怒鳴られたからである。
あたふたしたながら身なりを整え、急いでお店の準備を済ませ今に至る。

「居間で寝るなんて、先生も紫原君も風邪を引いたらどうするんですか」

「ごめんなさい」

返す言葉もございません。

「間に合って良かったですよ。今日は朝イチで相談の予約が入っていたんですからね」

「で、ですよねー……」

私を睨む出雲君から目を逸らすと同時に店の電話が鳴り響く。
電話から近かった私が受話器を手に取った。

「は『海鳴ちゃん!?おれお』……」

瞬間、私は電話を躊躇いもなく切る。

「海鳴先生、どうしたんです?いたずら電話でもかかってきたんですか?」

「ウン、ソウダヨ」

「何故カタコトなのかは敢えてスルーしますね」

呆れ顔で出雲が言ってすぐ、また電話がかかってきた。
銀髪の天パに死んだ魚の目をした男が頭に浮かんだ人、正解。

「あーはいはい、なんですか」

『海鳴てめえ、躊躇いもなく電話切りやがったろ!?』

相手の不機嫌さが受話器越からも伝わってきた。
めんどくさいや、また切っちゃお。

「すみませんが家に孫はいません、サヨウナラ」

『まてまてまて、俺が悪かった。ごめんね海鳴ちゃん!頼むから切らないで、可愛い幼馴染からのお願い!』

もー、珍しく電話をかけてきたと思ったら何がしたいのさ。

「てか銀時君別に可愛くないし」

『おま、人が必死に頼んでんのにその態度はないんじゃねえの!?』

「分かったってば。珍しく電話かけてきてまでどうしたの?とうとうもげた?」

『どこが!?痛いからそんな事言うのやめろよ!もげてたらイカの塩辛くさい女に電話なんかしねえ、美人のいる整形外科にでもいくわ!』

「あー、はいはい、ごめんごめん。で、どしたの?随分落ち着きがないみたいだけど」

本題に促せば銀時君は今すぐ家に来て欲しいと私に告げ、そのまま切ってしまった。
いや私仕事中なんだけどな。
でも銀時君がわざわざ私に電話をかけてくるのは珍しい事だから放置するのもね。どうしよっかな。


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