05
「つまり天人って奴らが開国迫ってきて今の江戸になったってことー?」
「まあかなり大雑把にいうとそうなるね」
紫原君は天人を知らなかった。 彼が嘘をついているとは思えないけど半信半疑だったのも事実。
しかし一通りこの世界の説明をした時の反応を見ると、彼がこの世界に対しての知識が皆無なのもまた事実。
信じるべきなんだろうなあ。
天人なんてのが存在してる時点で異世界なんてのがあってもおかしくはないだろうし。
「あ、そうそう、過激派の攘夷浪士には気を付けてね」
「うん大丈夫、気を付けるー。ねえ海鳴ちん、俺とっても大事な事思い出しちゃったんだけど」
絶対分かってないよこの子!
「本当に危険なんだからね?で、大事な事ってなに?」
「混乱してて今まで気が付かなかったけどお菓子どっかに落としてきちゃったみたいなんだよね。お菓子ないと俺、生きてけない……」
私は無言で紫原君の頬を引っ張った。
いやだってそうならない!?
「海鳴ちん痛いよー!あとなんかお菓子ない?」
どうしよう、目が切実だ。とてもしょんぼりしている。
「しょうがない、持ってくるから待ってて」
食器も運ばないといけないしね。
溜め息を吐きながら襖に手を伸ばし私はキッチンへ向かった。
ああ、そういえば私も出雲君もまだお昼食べてないじゃん。
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