04
「ごめん紫原君、もっかい言ってくれない?」

あっという間にご飯を平らげた少年は紫原敦君というらしい。
うむ、名前と色がピッタリだね。

お互い自己紹介を済ませ、落ち着いた所で紫原君に何故あんな所に居たのか聞いたのだが……。

「だーかーらー、学校でお昼食べようとして屋上の階段登ってたらいきなり視界が暗くなって、落下していくような浮遊感に襲われたの。んで、次に目を開けたら知らない場所にいつの間にか居たって言ってんじゃん」

俺だってまだ信じきれてねえしと呟く紫原君の肩をガッと掴む。

「紫原君」

「なに?やっと理解したわけ?」

「お昼は……食べられないよ」

「ヒネリつぶす」

大きな掌で私の頭を力一杯掴む紫原君。

「ちょま、痛い痛い!ごめんなさいちょっとした冗談っていうか痛いですほんとごめんなさい!!」

謝ると彼は眉間に皺を寄せながら、ぱっと私の頭から手を離した。

「つ、つまりあれでしょ、紫原君はこの世界の人間じゃなくて別の世界から来ちゃいましたみたいな」

「信じたくねえけどー、まあそうなるんじゃない?てかあの生き物なんなの?まじびびったし……。周りの人間は着物とか着流し着てて景色も江戸みたいだけど江戸じゃないっていうか」

「生き物?天人の事かな?まあ取り敢えずここ江戸だけどね。かぶき町ね」

「俺の知ってる江戸じゃないんだけど。つか天人ってなに」

疲れた顔で溜め息を吐く紫原君。
結構冷静だね、君。

「とにかく昨日の体験といい、この世界と俺のいた世界がまるで違う事といい、異世界に来ちゃったかもしれないって思ったんだけど」

「まあ話だけ聞くとそういう事になるよね」

ううむ、どうしたものか。

「……そうだ、次のページへ行こう」

「なんで『そうだ、京都へ行こう』みたいなノリなわけー?つか海鳴ちんさ、次のページ行っても現実は変わらないって分かってる?」

「それくらい分かってるよ!」

し、失礼な!


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