02
暖かい。

目を開ければ天井が視界に広がった。
固い壁に預けていた筈の身体は柔らかい布団の中。
鼻腔を擽る美味しそうな匂い。

どこかの民家。

もしかして壁に凭れかかっていた家の住人が、自分を家の中まで運んでくれたのだろうか。
キョロキョロと部屋を見渡すと襖が開き、着流しを独特な着方をした女性が顔を覗かせた。少しだけ目を見開く。
自分の所属している部活の主将に少し似ていたから。
髪の色も顔も。ただ雰囲気だけは全然だけれど。

「おお、起きたんだね、良かった。体調は大丈夫?痛いとこはない?ご飯は食べれるー?」

「え、あ……大丈夫」

「そっか」

優しく笑う女性。
その優しさに安心を覚える。
いや、もし悪い人だったらどうしようというのも頭の隅にいれておかなければ。
しかし美味しそうな匂いに自分の腹は大きな音を立てた。

うっわ、めっちゃ恥ずかしいし。

「うん、ご飯は食べれそうだね!顔色も悪くないし。ちょっと待っててね」

すぐご飯持ってくるからと言い、立ち上がろうとした彼女の袖を思わず掴んでしまう。

「?どうしたの?」

不思議そうな表情でこちらをみる女性は自分に問い掛ける。

「分かんない」

あれ、ほんとなんでだろ。首を傾げると女性も首を傾げた。
まあそうなるよね、普通。
赤ちんに似てたから?
とにかくパッと手を離す。
変な奴って思われたかも。

そう思いながら彼女の顔を見れば「すぐご飯持ってくるからね」と笑って再び襖を開けて出ていった。


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