君の手を引いていく覚悟の証
昼下がりの中庭に、軽快に風を切る音が響いていた。
ヒュン、ヒュン、と剣を降るのは、青目の少年エリオットである。
「ねえねえ、エリオットはなんでそんなに強くなりたいの?」
「なんでって…強い男には憧れるだろう、普通」
木陰に座ってその様子を眺めていた名前が、ふと思い立ったように問い掛ける。すると、エリオットは呆れたように名前をみやり、振り上げていた剣を下ろした。
「でも、憧れる気持ちと強くなりたい気持ちは、また別のものだよね」
「リ、リーオ…!」
名前の隣から聞こえた声と言葉に、エリオットはどもるようにしてその人物の名前を呼んだ。まるで焦るように出たその声は心なしか裏返っていて、リーオはしてやったり、といった風に笑っている。
「え、リーオは理由知ってるの?」
「うん、エリオットはわかりやすいからね」
良く見てればわかるよ、と言われ、名前はじっとエリオットを見つめてみる。すると、次第にエリオットの顔は赤くなり、それを誤魔化すように再び剣を降り始めた。
「…わかんない」
「あはは、エリオットもいい加減教えてあげればいいのに」
相変わらず照れ屋だよね〜と言うリーオに、エリオットは噛みつくように、照れてない!と叫ぶが、リーオはハイハイ、と聞き流すように返す。そんな中一人だけわかっていない名前は、むっと拗ねたように二人を見ていた。
それに気づいたリーオが何かを名前に耳打ちすると、名前はエリオットを見上げて口を開いた。
「エリオット、私のこと嫌いなの?」
「な、なんでそうなるんだ…!」
「だって、さっきから私の目、見てくれないし…嫌いだから、教えたくないんでしょ?」
言いながら、次第に俯いていく名前に、エリオットはまずい、と焦り出す。
「お、おい、名前…オレは別にお前のこと…」
いや、寧ろオレはお前をだな…とブツブツ呟くエリオットの声は名前には聞こえていないようで、相変わらず俯いたままの名前はきゅっとスカートを握りしめた。
そしてその手が震えてるのを見て、エリオットはガシガシと頭を掻くと、半ばやけくそになったように口を開いた。
「あああもう!!強くねぇとお前を守れねぇだろ!!!悪いかッ!?」
そう真っ赤な顔で怒鳴るように告げると、エリオットは荷物をひっつかみ、早足に中庭を去っていく。
取り残されたのは、予想外の理由に顔を上げきょとんとした表情の名前と、ケラケラと笑っているリーオ。
「ほら、行ってきなよ」
リーオはポンと軽く名前の肩を叩くと、本を手にその場を去った。
リーオに背中を押され、名前は慌ててエリオットが去っていった方向へと走り出す。
そして暫くして視界に捉えたその背中に、彼の名前を呼んでダイブした。
君の手を引いていく覚悟の証
(な…っ!)
(ふふ、エリオットだーいすき!)
(この…っ、そう言うことを易々と口にするな!)
―――――
烙季様から相互記念に頂きました!!
エリオットがかっこよすぎて……!
烙季様、有難うございました!!
お持ち帰りはご遠慮下さい。