「やあレディ、今日も可愛いね」
「じ、じじじ、神宮寺レン…!」
音也と一緒に食堂でお昼ご飯を食べていると、私の苦手とする神宮寺レンが目の前に立っていた。
そもそも何故苦手かというと、こいつは私と会うたびいちいち甘ったるい台詞を言ってくるからだ。その度私はドキドキしたり、顔が熱くなったり、とても心臓に悪い。そのうち破裂するんじゃないかと心配になる。
「音也、残りは食べていいから、じゃ!」
「え、ちょ、秋山!」
そう音也に言い残し食堂から飛び出す。とりあえずどこかに逃げたいと思い走り続ける。
「も、もう追って来ないよね…」
階段をとにかく駆け上がり、屋上に辿り着いた。
お昼時だから誰かしらいると思っていた屋上だけども、そこは何故か静まりかえっていた。
ふと腕につけている時計を見ると、授業開始まであと5分くらい。どうやらもう他の生徒達は教室に戻っていったらしい。
「……私も戻らなきゃ」
「意外と足が速いんだね、レディ」
「!!」
フェンスの方に向いていた体を恐る恐るドアの方へ向けると、そこには神宮寺が立っていた。
これは非常にまずい。
「それにしてもレディはこんな時間帯にここまで来るほど、俺と二人きりになりたかったのかな?」
「違う違う!たまたまだから!!」
「そうやって恥ずかしがる君も可愛いね」
神宮寺がだんだんと距離を縮めてきて、私はその度に後ろへ下がっていき、気がついた時には背中が壁についてしまっていた。
「ねえレディ、ひとつだけ聞いてもいいかな」
「な、なんですか」
ばくんばくんと鳴っている自身の心臓をなんとか抑えつける。(ち、近い…!)
「レディはどうしてそこまでして俺から逃げるんだい?」
神宮寺はさっきまでとは打って変わって、普段ではそうそうみることのない真剣な顔をして、私の目を見つめる。さっきからうるさかった心臓が、また更にうるさくなった気がする。
実際に私が逃げていることに変わりはないし、答えを引き延ばそうとしても神宮寺相手には効果がない気がしたので、思いきって言ってみることにした。
「え、えと、ですね…」
「………」
「その…神宮寺とこうして話したり近づいてこられたりするとね、心臓がドキドキするの…」
「……は?」
「あ、あと顔もすごく熱くなるし、なんというか…心臓がいつか破裂しちゃいそうというか…」
「………」
「お、音也とか翔とかは平気なの。なのに神宮寺だけはそうなるの…」
思っていたことを少しずつだけども神宮寺に伝えると、神宮寺はぽかーんとした表情をした後に、
「…ぷっ、くくっ…」
「なっ…!笑わないでよ!」
「いや、ごめんよレディ…ふっ…」
片方の手で口を抑え笑いだした。人が正直に話したというのにどういうことだ…!
「そっかレディが、ねえ」
「な、なによ…」
「いーや?それじゃあレディは…」
そして神宮寺は私の耳元に口を寄せ、
「俺にこういうことをされたらドキドキするってことかな?」
こう囁いてきたのでした。
(!!?)
(おっと……あーあ、顔真っ赤にして逃げちゃったよ)
((あんなの耐えられるわけないじゃない…!))
((絶対に気付かせてあげるんだから覚悟しててね、美鈴))
◎続くかもしれません
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