放課後、私は天文の資料やら天球儀やらがたくさん詰め込まれているダンボールを抱えて資料室に向かっていた。

理由はさっき廊下で偶々会った陽日先生に「悪い小川!俺、今急ぎの用事ができちまって!これを資料室まで運んでおいてくれないか!頼んだぞ!」と、ほぼ無理矢理押しつけられたからである。(今度ジュースでも奢ってもらおう)



「資料室って何階だっけ…」



入学して何ヶ月か経っているもののなんせこの学校は広い。しかも資料室なんて普段から使う機会なんてほぼ全くないから覚えてなんているわけがない。

…それにしてもこのダンボール、



「…………重い」



いったい陽日先生は何を考えているんだ。こんなに重いものを仮にも女の子に持たせるだなんて。
しかも資料室って何処にあるのかくらい教えてください。おかげで今困っていますよ。

そんなことを考えていたら、急に腕にずっしりときてた重みがほとんどなくなった。



「廊下のど真ん中でダンボール持ちながら立ち止まって、何してんだよお前は」

「あ、七海先輩」



どうやらダンボールが軽くなったのは、中に入っていた資料を少し(というか半分以上)七海先輩が持ってくれたからのようだ。
でもなんだかこのまま持ってもらうのも申し訳ない気がする。



「あの、一人で持てますから大丈夫ですよ」

「いいんだよ、こういう力仕事は男の俺に任せておけば。それに俺がやりたくてやってるだけだしな」

「はあ…ありがとうございます…」



若干納得がいかないが、今の七海先輩に何を言っても無駄なような気がしたのでお言葉に甘えておくことにした。



「ところでこれ何処に運ぶんだ?」

「あ、資料室なんですけど場所がわからなくて…」

「資料室か、それなら俺よく行くからわかるな、こっちだ」

「え、なんで資料室に…?」

「授業中に居眠りしちまってその罰で資料とか運ばされるんだよ…」

「……………」

「わ、悪いかよ!」

「いえ、別に…あ、ここですかね」



七海先輩の後をついていくうちに『資料室』と書いてあるプレートがあるドアの前に辿り着いた。



「……んしょっ、と…おい終わったぞー」

「あ、こっちも終わりまし…」



「終わりました」と言いたかったところで床に偶々置いてあった本につまづいてしまった。
転ぶと思ったその時、ぽふっという効果音が聞こえそうな感じに、私は七海先輩の胸にダイブしていた。



「おい、大丈夫か!!何処か怪我してたりとかは…」

「え、あ、はい…七海先輩のおかげで助かりました…」

「そ、そうか…って、うおおおおっ!?」



いきなり七海先輩が顔を真っ赤にして私から距離をとった。そんなに私の傍にはいたくないですか。



「ち、違うからな!これは別に、そういうつもりでやったわけじゃ…!!」

「その声は…哉太か?…ってあれ、小川さんまで」

「あ、東月先輩」



入り口の前には東月先輩がいた。資料室の入り口を開けたままにしていたからどうやら声が聞こえてたらしい。



「す、錫也なんで此処に…!」

「ん?ああ、俺は生徒会室にいる月子にクッキーでもと思って。それより、そういうつもりってどういうことだ哉太?」

「ばっ、ばか、そんなんじゃねーよ!!俺は運び終わったからな!じゃあな小川!!」

「おい哉太!!はあ、またね小川さん」



そう言い残して二人はその場を後にした。



「…変な七海先輩」





まだ気づかない恋の音

(小さくて聞こえない)





[ 1/2 ]


ブラウザバックでお戻り下さい。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -