放課後の星月学園。部活や委員会などには入っていないし、課題も終わらせてしまった私。長い廊下をずんずんと進んでいく。
今の私はご機嫌だ。理由はさっき偶然会った天羽くんに袋いっぱいに入った飴をもらったから。(宮地くんにもらったって言ってた。)天羽くんは飴の袋を2袋持っていて、1袋くれると言うから甘いものが好きな私は遠慮なく貰ってきた。
ただそれと引き換えに生徒会室のラボに電卓を置いてきてほしいとのこと。(天羽くんは木ノ瀬くんに急ぎの用事があるらしい。)それくらい飴と比べれば安いもんだ。
ということでレモン味の飴をひとつ口に入れながら生徒会室に向かっている。
「しつれいしまー………した」
「おい、人の顔を見てその反応はないだろ」
そうだ忘れてた。生徒会室ということは不知火もいるに決まってるじゃないか。あいつ一応生徒会長だったよ。嗚呼、一気にテンションが下がった。(しかも青空くんはいないし。)
「で、なんだ千里、俺に用事か?」
「変態不知火に用事なんてありません、来るな触るな寒気がする」
「寒気だと?お前風邪ひいてるんじゃないか?どれここは俺が抱きしめ」
「たら右ストレートね」
「なんだよそんなに恥ずかしがらなくてもいいんだぞ」
「いや、恥ずかしがってないから」
やっぱりこういうことになった。これだから不知火には会いたくなかったんだ!まさか天羽くんわかってて頼んだんじゃあるまいな。早いところ電卓を置いて帰りたい。
「ん、お前手に何持ってるんだ?」
「不知火には関係ない」
「飴かー、お、コーヒー味あるじゃねえか」
「ちょ、勝手に漁るな」
がさがさと音をたてながら飴を漁っている不知火。なんでこいつ普通に漁ってるんだ。許可出してないのに。(まあこいつには意味がないか。)
「なあ、この飴くれよ」
「それだけならまあいいけど…」
「さんきゅー」
不知火が欲しがってたのは無糖の苦そうなコーヒー味。苦いのが嫌いな私はそれをあげることにした。
というか…
「そこどいてくれないかな不知火」
「翼なら今いないぞ」
「その天羽くんに頼まれて電卓を置きにきたの、どいて」
「嫌だって言ったら?」
「このくそ不知火…!」
こいつ一体何がしたいんだ。手っ取り早くどけようと押してもびくともしない。(それを見てる不知火はすごく余裕そう。)
「もう、早くどいて!」
「んーそうだな、千里がこの飴を食べさせてくれるならどいてやる」
「はあ?」
「ほら早くしろよ」
そう言うと私にさっきのコーヒー飴を渡してきて不知火は口を開けた。もう、本当につくづく面倒くさいやつだ。
私は溜め息をつきながら飴の包み紙をとり、そして出てきた飴を、
「はい、どうぞっ!!!!」
「んぐがッ!!?」
おもいっきり不知火の口の中に突っ込んだ。
不知火は突然のことに驚いたようにしながら、口に手をおさえ咳き込んでいる。それをいいことに私は天羽くんのラボに足を踏み入れ電卓を置く。そして生徒会室から出るためドアに向かう。すると不知火がよろよろしながらこちらに向かってきた。
「おまっ、おもいっきり突っ込むことはないだろ!」
「お望み通り食べさせただけだけど?」
「それでももうちょっと優しくだな!」
「私にそんなこと求めた不知火が悪い」
「このっ…!」
「じゃ、またね不知火」
そう言い、私はドアの方にもう一度向く。
「待て千里」
「何、まだなんかあ、」
そう言いながら振り返った瞬間、
ちゅ
唇に熱い何かが触れた。(ちょっと苦い。)
「は、え、」
「これで許してやるよ」
目の前でにやりと笑う不知火。
あれ、心臓がうるさいし顔が熱い。今絶対に顔赤い。
「し、」
「へ?」
「不知火の、ばか!!」
「うおっ!?」
顔を隠しつつ、不知火を押しぬけ生徒会室から走り出た。
bitter kiss
(不覚にもかっこいいと思ってしまった…)
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