男装彼女 | ナノ
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▽ 青峰くんと男装彼女


「征くんすごいね、入部早々一軍だなんて」
「そうか?でもオレの他にも三人もいたんだ。オレがすごいのならその三人もすごいだろう」
「んー、でもやっぱり征くんが一番すごいと思うの」

あずさのその言い方は何だかオレが一番だと言っているようで、満更でもない気分になった。緩む口元を隠すようにシュートの体制に入る。だけどやはり橙矢あずさという人間はオレの期待をことごとく裏切るのだ。

「だって他の三人はみんな身長が高いけど、征くん小さいもん!」

手から放たれたボールはリングに当たってあらぬ方向に飛んでいった。


***


珍しくシュートを外した征くんにどうしたのと聞くと、かなり不機嫌そうな顔で睨み付けられた。私何か征くんを怒らせることをしちゃったみたいだけど何したのかな。

「ねえ征くん何でそんなに怒ってるのー?」
「怒ってない」
「うそ!怒ってるでしょ」
「怒ってないって言ってるだろう」

征くんにしつこく話しかけていると後ろから先輩に頭を鷲掴みにされて怒られた。あまりの痛さに征くんに助けを求めたけれど無視された。ひどいよ征くん。ぐすぐす言いながらボトルを洗っていると、後ろから誰かが私に近づいて来た。

「よっ!」
「…よっ!」

肩を叩かれて振り返ると、そこにいたのは肌が黒い男の子だった。にこにこと笑うその男の子は話したことはないけれど、入部早々一軍になった噂の一年生の一人だ。爽やかに挨拶されたので私も真似をして挨拶をしてみる。この人名前何だったっけ。ええと、たしか名字の最初に何かの色が付いてたような…。

「黒峰くんだっけ」
「おいテメー今オレの肌の色見て言っただろコラ」
「ごめんなさい」

頭を下げるとわしゃわしゃと撫でられた。怒ったのかと思ったけれどそうではないらしい。顔を上げると彼はやはりにこにこと笑っていた。

「オレは青峰大輝。よろしくな」
「あ、うん!わた…じゃない、僕は橙矢あずさ。よろしくね!」

それから青峰くんとはいろんな話をした。好きなスポーツや食べ物、マンガの話。それでも青峰くんの口から発せられるのはバスケという単語ばかりで、彼は本当にバスケが好きなんだなあと思った。

「つーかお前、顔も名前も女みてー」
「うえええええ、何言ってるの青峰くん!!」
「いやふとそう思っただけ」
「いいいいいやだなあ青峰くん!僕男の子なんだから!女みたいとか言われても嬉しくないんだからね!!」
「んな必死に言わなくても分かって「楽しそうだな、お前たち」…赤司」

背後から聞こえた不機嫌MAXな声におそるおそる振り返ると、そこには腕を組んで仁王立ちをする征くんがいた。征くんってばまだ怒ってるのかなあ。

「青峰、そろそろ練習に戻らないと先輩がキレかけてるぞ」
「うおうマジか。じゃあな、あずさ。頑張れよ」
「うん、青峰くんも頑張ってね!」

体育館の中に戻っていく青峰くんに手を振っていると、隣からじとーっとした視線を向けられた。誰の視線かなんて言わずもがな、我が幼馴染みの征くんのものである。

「え、と…。征くんまだ怒ってるの…?」
「…そう思うならオレの機嫌を損ねるようなことはするな」
「ええええ、征くん私の何に機嫌を損ねてるの!?」
「…もうお前なんて知らない」
「そんなこと言わないでよ征くん!!」

このあと征くんの機嫌を治すために練習中の征くんにまとわりついて、また先輩に怒られてしまいました。

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