男装彼女 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▽ オレのお馬鹿な幼馴染み


帝光中学への入学式を3日後に控えたある日の昼下がり。いつものように幼馴染みの家を訪れたオレを、信じられない光景が待ち構えていた。

「あっ、征くんいらっしゃーい!見て見て、さっき帝光中の制服届いたんだー!」
「………は?」

似合うー?だなんて呑気に尋ねてくる我が幼馴染みは、なぜか。
なぜか、帝光中の制服は制服でも、男子用の制服を着ていた。

「ちょっと…ちょっと待て。あずさお前おかしいだろう、どうして―――」
「おかしい?やっぱりネクタイの結び方変かなー?」
「うん、そのネクタイのぐちゃぐちゃ具合はいかがなものかと思うけどお前がまずおかしいと思うべきなのは下だ下。何履いてるんだお前」
「下…ああズボンのこと?そうそう、帝光って女子もズボンなんだねー」

そ ん な わ け あ る か … !
言いたいことはいろいろあるがとりあえず、ネクタイを結んでくれとせがむあずさに頭突きをかましてやった。





「いいかあずさ、学校にいる間はできるだけオレから離れるな。あと絶対に自分のことを"私"だなんて言わないこと。お前のその容姿だったら"僕"の方が好ましいからそうするように。それから、」
「もう征くん、そんなに何回も言わなくても分かってるってば!」

本当に分かっているのだろうか。これ以上うるさく言うと本当に機嫌が悪くなりそうだから黙っておくが、正直言うと不安で不安で仕方がない。ちらりと隣に視線を向けるとオレの密かにお気に入りだったキレイな長い髪が肩に付かない長さまでばっさり切られているのが視界に入って、やはりこんなことやめさせておけばよかったと今さらながら後悔した。

「…分かっているならいいんだ」
「征くんって昔から心配性だよねえ。大丈夫だよ、気難しく考えてる方がボロが出ちゃいそう」
「お前がお気楽すぎて心配なんだよ。頼むからこの三年間は大人しく過ごしてくれ」

あの日あずさがオレに着て見せた制服は男子の制服だった。慌てて店に連絡をしたあずさの母親曰く店の発注ミスらしい。女子の制服を急いで仕立て直しますと店員に言われたそうだが、当の本人であるあずさはもったいないからこの制服を着て行きたいと言い出したのである。オレと彼女の両親の必死の説得に全く耳を貸さず、それどころか「そんなにうるさいことを言う征くんなんて大嫌い」と言われてしまってはオレは黙るしかない。あずさは昔からバカでどうしようもない子だけど、それでもオレはこの子に惚れてしまっているのだから。嘘でも嫌いだなんて言われてしまっては耐えられない。あずさにとことん甘いオレは彼女の両親をどうにか説得し、学校にいる間はオレが責任を持って面倒を見ることを条件にあずさの男装を認めてもらった。だがしかし、どこに自分のかわいい娘が男の格好をすることに喜ぶ親がいるだろうか。あずさの父親は最後まで「帝光のかわいい女子制服を着たあずさを見たかった」と泣きついていた。

「そういえばあずさ、お前部活はどうするんだ?」
「うーん、あんまり入りたくないけど…。学校では征くんと一緒にいるって約束で男装してるからバスケ部かなあ。選手じゃなくてマネージャー」
「…そうだね、オレもそれがいいと思う」

好きな子と学校でも部活でも一緒。それはうれしいことであるはずなのに手放して喜べないのは、きっとこの三年間頭の痛くなることばかりが起きるからに違いない。

prev / next