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高尾が練習に来ない。
なぜか不機嫌な緑間に理由を尋ねたところ、あのバカは監督の授業で爆睡していたとかで罰として英語の長文を訳しているらしい。

「で、お前は何でそんなに不機嫌なわけ」
「……別にそんなことは」
「ないとか言ったら刺すから」

ふいっと視線を逸らした緑間の頭を鷲掴みにする。この後輩はこうやって目をかけてやらないと後々面倒なのだ。しばらく言いよどんでいた緑間だったが言わないとオレが手を離さないと悟ったのか、渋々といった様子で口を開いた。

「しずくが――」





「ホント助かりました!ありがとうございまっす」
「そう思ってんなら次から居眠りなんてするなよ」

しずくが高尾の課題を手伝っている。緑間からそう聞いたオレは、なぜか一年の教室に足を運んでいた。しずくがいるからじゃない。ただ高尾がいないと緑間と上手くコミュニケーションを取れるヤツがいないからであって、別にしずくと高尾が教室で二人きりという状況に苛立ちを感じたわけではない。断じて違う。

「しずくちゃんもありがとね!」
「ううん。今日中に終わってよかったね」

苛立ってなんかない。オレと話すときは泣きそうな顔をしてどもってばかりなのに高尾とは普通に会話しているとか。そんなの全然、気にしてなんて。

「お前のせいでもう下校時間じゃねぇか」

腹の底から湧き上がるムカムカとしたこの感情は全部、手間を取らせた高尾へのものなのだ。自分にそう言い聞かせて高尾の頬を力任せにつねると、苛立ちが少しだけ消えた気がした。

「痛い痛い!もー、そんなんだからしずくちゃんに怖がられるんスよ!」
「……あ?」

苦し紛れの発言かオレの苛立ちが分かって言っているのか。どちらにせよオレを動揺させるには十分な威力を持っていた。

「…そんなこと」
「え?」
「そんなこと、知ってるっつーの」

校門の方から緑間がこちらに歩いてくるのが見えた。十中八九しずくを待っていたのだろう。
オレがこれ以上ここにいる理由はない。早足で緑間の横をすり抜けた。
しずくの顔を見ることはできなかった。

どうしたらしずくはオレとも普通に話してくれるのだろう。何をしてやれば怯えたような目を向けられずに済むのだろう。どうしたら。

「…………クソッ」

この気持ちが何なのか本当は分かってる。マイナスからのスタートの恋だなんて、そんな無謀な恋はしたくないのに。