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お弁当を家に忘れてきた。だから売店にお昼を買いに行ったのだけれどお昼時の売店は想像以上に混雑していて。もみくちゃにされながらもパンやおにぎりの陳列棚を見たものの食べられないものばかりしか残っていない。迷いに迷った末、本日のお昼は200mlの牛乳を一パックとまいう棒三本になってしまった。

「…あ」

お弁当は忘れるしお昼はまいう棒三本だし、今日はとことんついてない。売店から脱出した私はなんと宮地先輩と鉢合わせてしまった。今は真ちゃんも高尾くんもいないから誰も私を守ってくれない。やっぱり誰かに一緒に来てもらえばよかった。

「何、お前も今日売店なの」
「は、はい…」
「ふーん…。で、何買った?」

どうして宮地先輩、私にこんなに構うんだろう。私が真ちゃんの妹だからかな。
びくびくしながら右手に提げていた袋を差し出すと、それを受け取って中身を覗き込んだ先輩は次の瞬間私をキッと睨み付けた。

「おま、何だこれ!」
「お…お昼ごはん、です…」
「これは昼飯とは言わねーよ!おやつっつーんだ!」

こんなんばっか食べてるからそんなにちっこいんだろ!とか、放課後まで腹がもつわけねーだろーがバーカ!とか。ガミガミと怒る先輩に涙が滲む。ダメだ、こんなところで泣いたって真ちゃんも高尾くんもいないのに。涙を堪えながら俯いていると、そんな私を見た宮地先輩は急にオロオロし始めた。

「お…おい、泣かなくてもいいだろ」

学ランの袖口からシャツの袖を引っ張り出した宮地先輩が私の目元をごしごしと擦る。力が強かったからちょっと痛かったけれど、先輩は本当に困ったような顔をしていたから黙ってそれを受け入れた。

「ほら、オレのパンやるから好きなの選べ」
「え…」
「何でもいいぞ。焼きそばパンとかカレーパンとか…あと何買ったっけ」

自分が買ったパンをいくつか挙げながら先輩はガサガサと袋を漁り始める。けれど立ったままでは漁りにくかったらしい。パンを漁る手を止めた先輩は何の前触れもなく私の手をぐいっと引っ張った。

「ちょっと来い」

ずんずんと廊下を突き進んでいく先輩に引きずられるように手を引かれる。どこに連れて行かれるんだろう。もしかしてどこか人目の付かないところに連れて行ってリンチでもするつもりなのかな。
本格的に泣き始めた私に全く気が付かない先輩がようやく立ち止まったのは屋上だった。

「そこ座れ…ってまた泣いてんのかお前」

先輩は呆れたようにそう言って、再びシャツの袖で私の涙を拭う。先輩の力はやっぱり強くて、そしてやっぱり痛かった。

「ほら、何もしねーから…。ただ一緒に飯食うだけだって。な?」

宥めるようにそう言ってフェンスにもたれかかるように腰を下ろした先輩が私を見上げる。くいっと手を引かれて、私は戸惑いながらも先輩の隣に座った。

「特別にお前から選ばせてやる。何がいい」

私の膝に袋から取り出したパンをぽいぽいと置いていきながら先輩がぶっきらぼうに尋ねる。申し訳ないからいらないと言いたかったけれど、先輩の有無を言わさぬ視線に負けて、膝の上にできたパンの山からクリームパンをいただくことにした。

「…あの、」
「あ?」
「これ、いくらですか…?」
「別にいらねーし。やる」
「でも、」
「うっせーな、いらねーつってんだろ。先輩命令だ、黙って食え」

宮地先輩は私の方を見向きもせずに焼きそばパンを咀嚼する。きっと何を言っても受け取ってもらえないんだろう。私は小さくお礼を言って、先輩に言われた通り黙ったままクリームパンを齧った。