コーヒーひっくり返すドジっ子☆
「誰だ、お前。なんでここにいる」

「あ、えと、僕、編入生の綾瀬巡です。その」

「あぁ、理事長の甥の」

「はい。それで臣、副会長に連れられてここ来たんですけど、寝ちゃって、目覚ましたらいなくて」

「ここは部外者立ち入り禁止のはずだが」

「す、すみません。あの、拉致されてっていうか、その、いや、なんでもないです」

会長はパソコンから顔を上げて、じっと検分するように僕を見た。
ごくりと息を飲む。
なんだろう。社会的に抹殺されるんだろうか。
僕の家はそう簡単に潰される家じゃないけど、西園寺財閥は敵に回したくない……!

こ、ここはごますり作戦だ!


「か、会長。その、紅茶入れましょうか」

「俺はコーヒーしか飲まない」

「あ、じゃあ、コ、コーヒーを入れてきます」

会長の無言の威圧から逃げるように隣の給湯室に入った。
コーヒーをドリップさせて、マグカップに入れる。

怖い怖い怖い!怖いよー!
僕怖い人は本当にダメなんだよ。怖いのは無理なの!
しかしいつまでも給湯室に籠るわけにもいかず、渋々とマグカップを手に持つ。

生徒会室に戻ると、夕暮れでオレンジ色になった部屋にイケメンが1人。
真剣な顔でパソコンとにらめっこしている。



「ほわわわわぁ」

こんなのチワワが見たら全員失神しちゃうよ!
僕だって危ないよ!

ああー、これが生徒会長×エンジェルとかだったら激萌えなんだけどなぁ。
生徒会長が自室に戻ったら、ベッドにエンジェルが寝そべっていて、「遅いんだけど!」とか言って、頬膨らませたりなんてしたら最高!

「うへうへ」

あ。
マグカップを持ったまま、妄想世界にトリップしていたら、声に出して笑っていた。

会長はそんな僕も無視している。
深海くんならここで、叩いてくれるか、絶対零度の視線をくれるのに、会長はなかなか飴と鞭の比率が厳しいなぁ。


「会長、コーヒーどうぞ」

「……ああ」

会長がパソコンから顔を上げる。
僕はマグカップを渡そうとして、パソコンの画面に映っている内容に目を見開いた。


「え!」

思わずマグカップを落としてしまう。

バシャン!
派手な音が生徒会室に響く。


「あっつ……!」

会長の端正な顔が苦痛にゆがんだ。
僕は慌てて状況を確認して、とんでもない失態をおかした事に気づいた。


会長の股あたりのズボンにコーヒーの染み。
マグカップは床に転がってしまっている。


「うわあああ! か、会長! ごめんなさい! あの、えっと、拭くもの! 持ってきます!」

慌てて給湯室から濡らしたタオルを持ってきて、会長の足元にしゃがみこむ。
会長はコーヒー色に染みてしまったズボンを気持ち悪そうに指でつまんでいる。


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bkm
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