――深海くんとのちょめちょめがあった日から数日。
僕は今なぜか生徒会室にいます。
「巡。紅茶とコーヒーとどっちがいい?」
「あ、えと、紅茶がいい」
「ちょっと待ってね」
言うまでもありません。
食堂で食事を楽しんでいたら、副会長の臣に連行されたのです。
いつもの事です。
臣はすぐに僕を連行するから危険です。
紅茶を入れている後姿を見る。
すらっと背が高くて、肩もしっかりあるのに、どこかほっそりして見える。
もう。
僕なんかかまってないで、チワワと戯れてくれたらいいのに!
それか会長と…。うーんでも臣ってやっぱ受けにするにはもったいない逸材なんだよね。
若干変態趣味だし、そこを活かして、受けたちを喜ばしてほしいっていうか。
「きょ、今日はエンジェルは?」
「あぁ、あいつなら疲れたって言って、保健室で寝てくるって言ってたけど」
エンジェル。保健室。
この2つのワードで昨日の悪夢のような出来事がよみがえってきた。
せ、攻め。エンジェル。攻め………。
「うあああああ!」
頭を両手で抱え込んで、身悶えた僕に、臣が慌てて近づいてくる。
「巡? どうしたの、大丈夫だから。落ち着いて」
「はぁっ、はぁっ」
「ほら、ゆっくり息吸って、吐いて」
背中をなだめるようにさすられて、ふぅふぅと吐いていた荒い息が落ち着いてくる。
「うううう〜。生きて行くのがつらい……」
泣き言を吐いて、臣の胸板に飛び込んだ僕を、臣は優しくキャッチする。
大きな手が僕の背中をさする。
ごめんよ、チワワちゃんたち。
この胸の中は至福なんだぜ。なんていうか臣って母性本能みたいなものが搭載されているのか甘えるのにベストな存在なんだぜ。
僕は昨日の保健室のエンジェルの衝撃発言により、多大なダメージを受けている。
このままじゃ、トラウマになりかねない。
だから今は臣の胸にうずくまるんだい!
「どうしたの、巡。急に死にそうになっちゃって」
「……だって、エンジェルが」
「耳野? なに、あいつにそんなに会いたかったの? そんなこの世の終わりみたいな顔しないでも巡が呼んだらすぐに会いに来るよ」
「……うん」
「そんなに耳野がいいの? 妬けちゃうなぁ」
臣はくすりと笑って、僕の髪にキスを落とした。
ちゅっちゅっと柔らかい音が降ってくる。
僕はそれに甘えるように頬を胸板に擦り付けて、うとうとと目を閉じた。