「ん? おーい、入ってこい」
あ、またトリップしていたらしい。
失礼しますと声に出して中に入ると、門番さんは煙草を吸いながら、ソファに腰かけていました。
「転校生。理事長の甥っ子なんだって? 理事長に似てないな、可愛い顔してんのな」
「可愛くはないです」
「んー、そうか?」
疑問形で言われても困るし!
煙草をぷかぷかとふかしながら、書類を僕に手渡してくる。
「お前の部屋は3階の315号室な。同室は、あー、まぁちょっと厄介な奴だが頑張れ」
「え、僕怖い人は無理です」
「怖い人、んー、まぁ、怖い人だな。諦めろ」
ハハハッと笑う門番さんに涙がジワリと滲む。
怖いタイプの人間は本当に無理なのに。不良とかすごく怖いのに。
そんな人だったらどうしよう。
不良攻めは大好きだし、むしろ不良受けも大好きだけど、接するのは怖い。
だって僕、今までも不良に近づくとだいたいいじめられていたし、いい思い出がない。
不良の周りにはたくさんBLが詰まっているのは常識だけど、でもそれよりも自分の身の安全が心配。
僕って腐男子失格かな……。
沈んで顔を伏せた僕を心配したのか、門番さんが僕の隣に移動してくる。
「そんな心配すんな。もし無理だったらここに逃げてこい」
「……ほ、ほんとに? 僕、ほんとにここ来ちゃうよ?」
「…………っ」
門番さんの服の袖を掴んで見上げる。
涙が溜まっているせいで視界がぼやけるけど、門番さんがごくりと唾を飲んだのが分かった。
「……やべぇ」
僕の頬に手が添えられる。
きょとんとして見上げると、門番さんがゆっくりと顔を近づけてきた。