カードキーをかざして、扉を開けると、そこには深海くんがいました。
しかもパンツ一丁で。
「ぎゃ!!!!」
思わず奇声をあげた僕に、深海くんが汚物を見るような目で見てきました。
あん。相変わらずのその氷点下の視線がなぜか少し愛おしい。
しかもお風呂上りに、タオルとパンツだけ。
ごちです! 写真撮って、学園で販売させてください!
「……俺になんか言うことは?」
「あ、あの、心配掛けてごめんなさい。……怒ってる?」
深海くんがじっとこちらを見てくる。
僕は肩を縮こまらせて、深海くんを恐る恐る見上げた。
ちなみにまだ玄関先です。靴も脱いでません。
「何も怖いことなかったんだな?」
深海くんが聞いてくる。少し考える。
起きたときは少し怖かった。
睡眠薬入りの紅茶飲まされて、起きたら縛られていた。
その後、身体を自由にされて。
そんな事を馬鹿正直に言ったら、この人はどんな顔をするんだろう。
一瞬そんな事を考えて、すぐに首を振った。
「怖くなかったよ。新しくできた友達とちょっと遊んでて」
「そうか。ならいい」
深海くんはツンと僕の額を人差し指でつつくと、自分の部屋に消えて行った。
なにあのツン!
ラブラブカッポーが「おいお前」「もうやめてよぉ」なんてする、あの伝説のツンツンじゃないですか!
ぎゃん!
悶え死ぬよ。深海くん。君はなんて優秀な攻めキャラなの。
それでチワワちゃんたちを華麗に攻めてるんだね。分かるよ。
「深海くん! 今、学園で好きな子とかいるの?」
思わず自室の扉越しに聞いてしまった。
好奇心に勝てなかったぜ!
「は? 俺、女が好きだから、男とか考えたことねぇよ」
「え、あ、え、聞かなかったことにしまーす!」
「なんでだよ!」
だめだめだめ。
深海くんは優秀な攻めキャラでいてもらわなきゃ。
まさかチワワたちの夢を壊すわけにいかないでしょ。
深海くんがノンケだなんてありえない。この世の終わりです。
僕は自室に入って、ふかふかのベッドに沈み込んで少し泣きました。