臣が僕の頭を抱えながら、電話をしている。
その光景をエンジェルはじっと見て、キッと眉を吊り上げた。
ぎゃっ。やっぱりダメ。エンジェルが悲しむ。
臣のことは僕なんとも思ってないからね、大丈夫だからね。
臣のそばからスイッとさりげなく離れて、ソファに着地すると、そのうちエンジェルがゆっくりと僕の隣に座った。
何やら笑顔だ。
良かった。僕の意図が伝わったようだね。エンジェルを悲しませるようなことはないからね。
「巡くんって言うの?」
「がはっ!」
上目づかいで、首を傾げての、名前呼び!
くそ!吐血ものだよ!
「うん、そうです」
「可愛い名前だね、ぴったり」
「え、え、そうですか? えんじぇ、えっと、耳野さんも光っていう名前ですよね。キラキラしてるからぴったりです」
「僕、巡くんにはキラキラして見えるの?」
「え、はい、もちろん! 鼻血でそうなほど可愛いです。天使みたい!」
「嬉しい。光って呼んでいいよ」
よだれが垂れました。
深海くんがいたら、汚物を見るような目で見てきたでしょうが、ここにはエンジェルだけです。
エンジェルはキラキラした光線を出せる瞳で、僕をじっと見るだけです。
深海くんの痛烈な視線よりも、攻撃力が高い気がするのは気のせいでしょうか。
「光、くん?」
「うん。光だよ?」
「光くん、」
「なぁに、巡くん」
「光くんっ」
「巡くん」
エンジェルが僕の前髪をさらりと、細い指で撫でました。
鼻血が出ました。
エンジェルは冷静な顔でティッシュを丸めると、僕のお鼻に優しく突っ込んでくれました。
「おいおい、僕が注文している間になに仲良くなってんの。悪いけど、巡は僕のものだよ」
「崎原は向こう行っててよ」
「ほらね、耳野の好みだと思った」
「ふん。知らない」
臣が電話から戻ってきて、僕の隣に腰掛けると、僕を優しく後ろから抱きしめてきた。
鼻に差し込まれたティッシュを見て苦笑している。
臣が来ると、エンジェルの機嫌が急に悪くなった。
なんて分かりやすいの、エンジェル。
気の多い副会長に嫉妬するエンジェル!萌えええええ!
なんなの。理想的なカップリング。
副会長の若干怪しげな幼児フェチも、エンジェルなら僕も気にならないよ。
エンジェルにおしっこだってさせればいいよ。なんなら、僕も見たいよ。