「ん……。なに、巡。お腹でもすいたの?」
「え、ううんすいてない」
「そう。じゃあ、もう少し寝ようよ」
「……うん」
臣は僕の返事を聞くと穏やかに微笑み、僕の肩を抱き寄せてまた目を閉じてしまった。
すうすうと小さな寝息が聞こえてくる。
ベッドのシーツに触れてみる。
さらさらだ。
数時間前であろう、僕がやらかしたおもらし跡は見事にない。
すでにベッドメイクがされたらしい。
ボルドーっぽい色のシルクのシーツが今は敷かれていた。
それにホッと息を吐きながら、鈍くだるいお尻をすりすりと触る。
あぁー、臣とのエッチ、結構よかっ………、じゃねぇだろうが!
おいおいおい!
僕は腐男子ですよ?
腐男子たるもの、BLを観察するのが本分であるわけで、間違ってもまさか自分が実践するなんてそんな萎えるような事するものじゃないんですよ!
それなのに、なんで。
嗚呼……。
僕はなぜあんなにも我慢に弱いのだ。快楽に弱いのだ。
自分で泣けてくるよ。
門番さんの次は、臣。
セカンドバージンまで奪われて、僕はもうどんな顔で深海くんに会えばいいんだ!
あれ。
深海くん?
あ、やば!
臣に拉致られてから、彼に連絡してない。
彼のことだ。
冷たい態度ながらに、僕を心配しているに違いない。
ごそごそとベッドを抜け出し、制服のポケットに入っていた携帯から、深海くんにメールを打つ。
ちなみに携帯の液晶を見てみると、夕方の6時だった。
お昼に食堂で拉致されてから、およそ6時間が経っている。
ついでに言うと、まじめなこの僕が午後の授業もまるっとサボったという形だ。
こんなことバレたら、叔父さんに怒られる。