きょろきょろ周りを見ながら歩いていると、深海くんに頭を叩かれた。
「よだれ出てる」
「あ、やだ」
服の袖でよだれを拭っていると、深海くんが汚物を見るような目でこっちを見ていた。
やだ。ゾクゾクする!
って、僕、M要素あったのかな。
なんか深海くんといると、違う扉開きそうで怖い。
「あそこ空いてるよ。巡、あそこ座ろう」
「うんっ」
キラキラしている沢村くんが僕を先導してくれる。
僕はそれに着いていきながら、いつ彼が本性を出すのか若干ビクビクしていた。
3人でご飯を食べていると、昨日と同じようにまた食堂中にすごい歓声が沸いた。
僕もつられて、「きゃああああ!」と声を上げてみる。
沢村くんが僕をぎょっとした顔で見て、深海くんは慣れてしまったのか呆れた顔で僕の頭を叩いた。
容赦は全くなかった。
「……いったーい。暴力はんたーい」
「うっせぇんだよ。奇声を出すな」
すごい眼光で睨まれて、おずおずと引き下がる。
べ、別に、ビビッてるわけじゃないんだからね! ここは大人になって一歩、大人になってだな、喧嘩はいけないよねって話だよね。まぁ? 僕と深海くんが本気を出せば、周りにも危害が加わるかもしれないし?
こほんと咳払いをして、今日頼んだ「シェフの気まぐれランチ」を食べる。
今日は無事、貝は入っておらず、普通においしそうな煮込みハンバーグだった。
「お前、昨日貝出てきたのによくまた気まぐれ頼むよな」
「うん。だって、気まぐれを頼まないとシェフの人となりって分からないでしょ」
「頼んでも分かんねーよ」
深海くんの軽快な突っ込みに、沢村くんがおかしそうに笑った。
僕はしゅんとしながら、サーブされた水を飲んでいると、目の前に副会長が現れた。
いきなりの美形に思わず、水を飲んだままむせこむ。
「な、なんで?」
副会長がさすがに目の前にいたらビビる。
深海くんも沢村くんも不思議そうな顔だ。
周りの生徒たちも副会長の動向をじっと見ている。
確かにさっき歓声が上がっていたな。さっきの歓声は副会長のものだったのか。
今日は1人きりのようだ。軍団ではない。
くそ。残念だ。マイエンジェルとこんにちはしたかった。くそ!