分かる、気持ちがすごく分かるよ。
ほら早く深海くんに誰かお茶とか引っかけちゃいなよ。それでキレた彼が胸ぐら掴むんだけど、チワワの可愛さに「これくらいにしといてやらぁ」とか言っちゃったりして。
「ぎゃん萌え!」
あ、声に出てた。
やばい。
あ、また深海くんが汚物を見るような目でこっちを見ている。
慌てて駆け寄って彼が座ったテーブルの前に腰掛けた。
タッチパネルで料理を選ぶらしい。
深海くんは焼肉定食を頼んだようで、僕はタッチパネルを楽しみながらシェフの気まぐれ定食を選んでみた。
料理が運ばれてきた。
彼の前には焼肉定食、僕の前にはパエリアが置かれた。
豪華なムール貝が乗っている。
「え、僕、貝だめなのに、パエリア……え……」
「ははっ、お前馬鹿か。初日に気まぐれ定食頼むって勇気あるな」
「だ、だって」
「ほら」
深海くんがパエリアと焼肉定食を交換してくれた。
「え、優しい。ありがとう」
「別に。俺は貝好きだし」
「……惚れちゃう!!!」
深海くんは黙ってパエリアを食べている。
なんてかっこいいの!惚れるよ!これは!
僕、男好きじゃないし、不良なんて苦手なのに、まさかの面倒見のよい不良!やだ!この人、猫に傘とか掛けちゃうタイプじゃん。やだ、理想的。
「あ、惚れんなよ」
「……ぐはあああああ!」
鼻血が噴き出ました。
なにこの人!
受け要員かと思ってたけど撤回!完全攻め要員!タチだ!
いい!これで可愛い子とまぐわってくれたらもう僕死んでも一片の悔いなし!
「……お前」
鼻血で血まみれの僕をまた汚物を見るような目で見てきたけど気にしません。
僕は強い子です!