…………あ。
「……なんか言う事は?」
「ご、ごめんなさい。僕、すっかり忘れてて」
「そんな事だろうと思った」
「ごめん。嫌いにならないで!」
「お前ねぇ、そんな風に言うくらいなら授業ちゃんと出ろ。それから連絡くらいしろ」
「はい、ごめんなさい」
深海くんに平謝りしていると、僕と深海くんの間に大きな人影がうにゅっと入ってきた。
「めぐちゃんの事、叩いていいとでも思ってんの? 誰の許可を得てそんな事してんの。偉そうに。めぐちゃんいじめたら殺すよ」
「あぁぁぁ? 書記が何の用だよ」
バチバチと2人の間で火花が散る。
え。え。え。
なんでこんな急に臨戦態勢?
「あんた、めぐちゃんの何なわけ」
「同室だけどって、書記喋りすぎじゃね。初めて見たんだけど」
「めぐちゃんによからぬ事したのあんたじゃないだろうな。ていうか、同室ってだけでも許せないし」
「なに、お前。こいつの事好きなわけ」
「そうだけど? それがなに」
喧嘩は嫌い。怖いのも嫌い。
ビクビクと縮こまる僕の頭を深海くんが安心させるようにぐりぐりと撫でてくれた。
食堂が静まり返っているのも忘れて、無心で深海くんを見上げる。
「悪いな。巡は俺の事が好きなんだよ」
フッと、深海くんがかっこよく笑った。
あんまりかっこいいから。
あんまりかっこいいから。
「深海くん、すき……」
「知ってる」
深海くんが優しげに笑う。
目を細めて僕を見る。
思わず抱き付いてしまいそうになって、すんでのところで武留の声に引き留められた。
「め、めぐちゃん。嘘だよね。嘘だよね。嘘って言って!」
「武留。ごめん、僕……」
「絶対!!!! 聞かないから! 聞かなかったから! めぐちゃん、それでいいね!」
「う、うん」
「めぐちゃん、俺の事嫌いじゃないよね?」
「うん。武留、いつもありがとう。ずっと守ってくれてるの知ってるよ」
「めぐちゃんッ!!!!! 今日は本当に幸せ! めぐちゃんへの贈り物考えるのに忙しいからちょっと帰るね! じゃ」
武留は食堂中の視線など全く気にせずに、急いだ様子で出て行ってしまった。
深海くんと目が合う。
「あの人、飯食ってねぇんだけど」
「深海くん、食べる?」
「もったいねぇし、食うか。ていうか、あの人なんなの。前からの知り合い?」
「小学校からの友達で」
「へぇ、お前って本当に交友関係広いよな。しかも思いっきり好かれてるし」
「ははは、まぁ武留は変わってるから」